2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J03196
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
阿部 陽香 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ヘリウム3-ヘリウム4 / 量子液体 / 超音波 / 界面 |
Research Abstract |
この^3He(ヘリウム3)と^4He(ヘリウム4)を混合した溶液は、約0.9K以下で^3He濃厚相(c相)と^3He希薄相(d相)の2相に相分離する。^3He濃厚相は低温ではほぼ100%^3Heであるのに対して、^3He希薄相は超流動^4He中に常流動^3Heが数%〜数十%ほど溶けている系であり、その濃度は温度や圧力によって変化する。つまり、温度や圧力変動によって、界面では2相間での^3He準粒子の移動、つまりphase-conversion(相変動)が起こる。本研究の目的は、平衡状態にある相分離界面に垂直に超音波パルスを入射し、その透過係数をもとめ、界面のMobilityを明らかにすることである。超音波による微小な圧力変動により2相間にphase-conversionが起こると、^3He希薄相中の^3He準粒子がこのphase-conversionにすばやく追随できない時にエネルギー散逸が生じ、これは超音波透過係数に反映される。その透過係数から界面成長係数を見積もることができる。この測定の難点は、バルク液体での超音波減衰の影響が非常に大きいため、いかに透過係数を精度良く求めるか、ということであった。本研究は、超流動成分のみを通すVycor grassを用いて、セル内の^4Heの量を断熱的にコントロールし、界面位置を連続的にかつ一定速度で動かすことにより、バルク液体での減衰の影響を取り除いた透過係数を得ることに成功した。T=2mK-100mKでの測定結果から、低温になるにつれて、成長係数は流体力学的領域からBallistic領域(Collisionless領域)に移行することが明らかになった。流体力学的領域での成長係数の振る舞いは、界面領域での音波の減衰を考慮することで定性的に説明することができる。また、Ballistic領域での振る舞いも、3-particle collisionを考慮することにより定性的に説明することができる。 さらに今年度は、高速度カメラを用いて相分離界面の視覚化を実現した。界面のMobilityを観測するために、^3He希薄相中から界面に向けて、強いパワーの超音波を入射したところ、界面の波打つ様子が観測された。さらに強いパワーの超音波を入射すると、トランスデューサー上に気泡が生成されることを発見した。
|
Research Products
(2 results)