2004 Fiscal Year Annual Research Report
バナナ型分子におけるキラル強誘電液晶の自然分晶とキラリティの起源
Project/Area Number |
03J03275
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 伸博 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 液晶 / 強誘電相 / 反強誘電相 / スメクチック相 / キラリティー / 自然分晶 / らせん構造 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、数種類のバナナ型構造をもつ新規液晶分子を合成すると共に基礎物性測定をおこない、バナナ型液晶分子が形成するバナナ相の発生要因について検討した。以下にその主な結果を示す。 ・オキサジアゾール環をベントコアに含むバナナ型液晶分子の合成ならびに相構造決定 前年度に引き続き、オキサジアゾール誘導体がベント構造を形成する液晶分子を合成し、形成する液晶相の相構造の決定ならびに物性評価をおこなった。合成したバナナ型分子の液晶温度領域は比較的高く、主に200度以上の領域において通常の液晶分子に見られるようなネマチック相ならびにスメクチック相を示した。その低温領域、約150〜200度付近においては典型的なバナナ型分子において観測されるバナナ相が観測された。このオキサジアゾールを含む液晶分子で観測されたバナナ相は、典型的なバナナ型液晶分子で観測されるB4相と偏光顕微鏡観察における構造が類似しており、また円二色性スペクトルから確認できるようにキラルならせん構造を含む相であることがわかった。また、固体NMR測定により、このバナナ相における分子構造について検討したところ、このオキサジアゾールを中心コアにもつバナナ型分子では通常のバナナ型分子と異なり、分子がねじれたキラルな構造をとっておらず、キラル相の発現要因は分子のコンフォメーションに依存しないことがわかった。しかしながら、広角ならびに小角X線回折の結果は複雑な回折像をあたえ、このオキサジアゾール環のベント構造に起因される液晶相構造の完全解明にはいたっていない。 ・非対称エステル結合型バナナ型液晶分子の設計と合成 液晶相の構造解明に不可欠な物性測定、ならびに液晶相における不斉合成の実現にはバナナ相は室温付近における発現が望ましい。このため、ベンゼン環を中心ベントコアにもつ非対称バナナ型液晶分子の合成をおこない、液晶相発現温度領域の低温化を検討した。この非対称バナナ型液晶分子は100度以下の比較的低温領域においてバナナ相を示し、観測されたバナナ相における液晶ドメインは三角波印加によって分極反転を示すことより、強誘電特性を示すことがわかった。
|