2004 Fiscal Year Annual Research Report
安定核領域から遠く離れた中性子過剰核の磁気モーメントと核構造
Project/Area Number |
03J03327
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
亀田 大輔 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 原子核構造 / 中性子過剰核 / 魔法数の消失 / 重イオン加速器 / 核磁気共鳴 / 核磁気モーメント / 不安定核 / β-NMR法 |
Research Abstract |
天然に存在する原子核やその近隣の放射性同位体の中で、2、8、20、28、50などの特定の中性子数または陽子数から構成される原子核は他の原子核に比べて安定な構造を持つことが広く知られている。これら魔法数の存在は、電子の閉殻形成によって希ガス原子が化学的に安定になる様に、原子核にもそれに似た殻構造が存在する根拠となっている。近年、安定核から遠く離れた不安定核の生成・分離が可能となり原子核構造の研究が飛躍的に進展した。その過程で、特定の不安定核ではそれら魔法数における閉殻構造が破れていることが分かってきた。本研究では、安定核に比べて非常に多くの中性子を含む中性子過剰核^<30>Alと^<32>Alを生成・分離し、その磁気モーメント測定を通じて中性子数20の閉殻構造の破れを実験的に検証した。磁気モーメントは、原子核の殻構造を如実に反映する物理量であり、閉殻構造の破れに鋭い感度をもつ。例えば^<32>Alと同じ中性子数19をもつ^<31>Mg及び^<30>Naの磁気モーメント値は中性子数20の閉殻構造に基づいた理論計算値から顕著に小さくなっており、この近隣における閉殻構造の変容を物語っている。^<30,32>Alの生成は理化学研究所の重イオン加速器施設にて行い、それらの磁気モーメントはβ線の放出角度異方性の変化から核磁気共鳴を観測する手法(β-NMR法)を用いて測定した。その結果、^<30>Al及び^<32>Alの磁気モーメントはそれぞれ(3.012±0.009)μ_N、(1.958±0.011)μ_Nとなった。両実験値は通常の閉殻構造に基づく理論で良く再現されることが分かった。本結果は^<31>Mgや^<30>Naの報告と好対照を成しており、閉殻構造の変容の境界を定める上で重要なデータである。
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Research Products
(1 results)