2004 Fiscal Year Annual Research Report
マントルダイナミクスの解明に向けた大容量高圧発生技術の開発
Project/Area Number |
03J03356
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
丹下 慶範 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高温高圧実験 / 高圧地球科学 / 下部マントル / 川井型マルチアンビル装置 / 焼結ダイヤモンドアンビル / 相平衡実験 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度までに確率した、川井型マルチアンビル装置を用いた高温高圧発生技術をさらに発展させ、50万気圧、2000℃という温度圧力発生を可能にした。この値は従来マルチアンビル装置を用いて行われてきた実験の圧力が、27万気圧までで頭打ちされていたことを考えると、飛躍的な進歩である。 高温条件での超高圧発生が可能になったことを利用し、22万気圧から50万気圧という幅広い圧力領域で、マントルの主要構成成分である、MgO-FeO-SiO_2系の相平衡実験を行い、下部マントルの研究へと応用した。実験には川井型マルチアンビル装置と焼結ダイヤモンドアンビルを組み合わせて使用し、発生圧力の決定には放射光その場観察実験法を用い、実験は主に大型放射光施設、SPring-8で行った。昨年度は1500℃における一連の実験を行ったが、今年度はそれに加えて、2000℃での実験を45万気圧まで行った。それにより、深さ約1400km、下部マントル中部領域までの、MgO-FeO-SiO_2系の相平衡を決定した。下部マントルの主要構成鉱物である、マグネシウムケイ酸塩ペロブスカイトへの、鉄の最大固溶量の温度圧力依存性を詳細に決定し、また共存するマグネシオウスタイトとの間の、鉄-マグネシウム分配関係を明らかにした。その結果、下部マントル最上部から中部にかけては、分配係数に大きな圧力依存性が存在することが観察され、二価鉄イオンはマグネシオウスタイトに強く濃集することが判明した。また、2000℃、40万気圧という温度圧力条件では、マグネシウムケイ酸塩ペロブスカイトへ30%以上もの鉄成分が固溶することが初めて明らかになり、今回の実験から得られた試料を今後詳細に分析することは、固体地球最大の体積を持つ、マグネシウムケイ酸塩ペロブスカイト固溶体の性質を知る上で重要な手がかりとなる。
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