2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J03430
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中島 裕美子 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヒドラジン / ポリヒドリドクラスター / 窒素 / 水素 |
Research Abstract |
本研究はポリヒドリドクラスターに特有な二つの機能(基質-金属間の多電子移動能、水素供与能)を利用して窒素の触媒的水素化を達成しようとするものである。まず、窒素活性化の準備段階として、窒素の還元体であるヒドラジンの反応を検討した。 三核ルテニウムペンタヒドリド錯体1とヒドラジンの反応は加熱条件(100。C)下でのみ進行し、N-N結合の切断を経てイミド錯体を生成した。このとき、置換ヒドラジンのN-N結合は錯体1の3つのルテニウムの協奏作用により切断されていることがわかった。また、錯体1と種々のヒドラジンとの反応の活性化パラメータの値を算出し、ヒドラジンのかさ高さおよび求核性が反応に及ぼす影響について考察した。 さらに効率よくヒドラジンのN-N結合を切断する錯体を見出すため、種々のポリヒドリドクラスターとヒドラジンとの反応を検討した。その結果、イリジウムとルテニウムからなる数種のヒドリド錯体存在下では、ヒドラジンが触媒的に水素化されることを見出した。これまで報告されてきたヒドラジンの触媒的還元反応は、ほとんどが錯体の他に還元剤とプロトン源を必要とするものであり、このように、ヒドラジンと水素によって触媒的にアンモニアが生成する反応は世界ではじめての例である。この反応における活性種は各イリジウム錯体の分解生成物であることを明らかにした。 ヒドラジンの反応に並行して、本研究室で合成された種々のポリヒドリドクラスターと窒素の反応を検討し、二核ルテニウム錯体および4核ルテニウム錯体が温和な条件下で窒素と反応することを明らかにした。この反応はポリヒドリドクラスターを用いた窒素の活性化を実現化への足がかりとなる重要な実験結果であり、現在、反応生成物の同定に努めている。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Yumiko Nakajima, Hiroharu Suzuki: "Nitrogen-Nitrogen Bond Cleavage of Hydrazine Derivatives by a Trinuclear Pentahydride Complex of Ruthenium, (Cp'Ru)_3(μ-H)_3(μ_3-H)_2 (Cp'=η^5-C_5Me_5)"Organometallics. 22. 959-969 (2003)