2003 Fiscal Year Annual Research Report
散在性反復配列SINEの挿入を指標としたAfrotheria内部の系統解析
Project/Area Number |
03J03484
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西原 秀典 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Afrotheria / SINE / 系統学 / 分子生物学 |
Research Abstract |
本研究の目的はSINEの挿入を指標としたAfrotheria内部の系統解析である。その中でも特に私はゾウ、海牛目(ジュゴン・マナティー)、ハイラックスの関係に注目した。近年の分子系統学の発達により哺乳類の目間レベルの系統関係に関しては次第に明らかにされてきたが、それにもかかわらずこの三つの目間に関しては、未だに明確に示されていない。一方で、形態学・古生物学的観点からは、ゾウと海牛目の近縁性が非常に強く示唆されてきた。本研究ではSINEと呼ばれるゲノム中の散在性反復配列の挿入パターンを数多くの座位に関して比較することによってそれらの系統解析をおこなった。この解析法では従来の配列比較による系統解析と比べて信頼性が格段に高いため、分子系統学において有用な方法として注目されている。本研究において32遺伝子座を各種間で比較した結果、系統関係を支持する遺伝子座は一つしか得られず、上記の三者は非常に短期間の間に種分化を起こしたことが示唆された。このことから、ゾウと海牛目において見られる共有派生形質は短期間の間に急激に進化したと考えることができる。このような可能性はこれまでの古生物学的観点からはまったく提唱されておらず、哺乳類の進化系統学において非常に興味深い例である。さらに、これまでのゾウや海牛目に近縁な絶滅種に関する古生物学的研究から、彼らの共通祖先が半水棲生活をしていた可能性が近年提唱されている。このことと本研究の結果を合わせて考えると、ゾウと海牛目に共有されている形態的特徴は短期間の水棲適応の結果・急激に進化したことが示唆された。この成果に関しては論文として投稿すべく現在準備中である。
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