2004 Fiscal Year Annual Research Report
島嶼社会の「近代」経験に関する歴史社会学的研究:小笠原諸島を中心に
Project/Area Number |
03J03627
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石原 俊 大阪大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 小笠原 / 沖縄 / 島嶼 / 占領 / 帝国 / 法 / 生活史 / 生活世界 |
Research Abstract |
小笠原諸島は19世紀前半まで「無人島」であったが、1830年代以降、捕鯨船などの寄港地としての経済的利益を見込んだ入植民、寄港船からの離脱者・脱走者、漂流民、略奪者など、雑多な移住民(以下、先住移民と表記)が集まってきた。かれら先住移民たちは、「アメリカ合衆国」や「大英帝国」など主権的な「法治国家」が宣言/執行する「近代法」の影響力を、間接的に受けながらも、その排他的な法の下には取り込まれず、島々を結節点とした自律的な生活世界を形成していた。しかし、1870年代に入ると「日本帝国」が小笠原諸島に対する主権的・排他的な法の宣言/執行に成功していき、本格的な占領を進めていくことになる。 本年度はまず、この19世紀後半以降の時期を中心に、まず、先住移民たちが「臣民」として帰化させられていく過程における意識や実践の変容を、「日本帝国」側の行政文書、海外の外交官や宣教師による記録類、内外発行の新聞類などに基づいて分析した。 本年度は次に、19世紀後半から世紀転換期に至る先住移民の生活世界の変容について、歴史社会学的な検討を行った。「日本帝国」は小笠原諸島の占領にあたって、先住移民(「帰化人」)に主権的・排他的な法の順守を強制する一方で、かれらが寄港する「外国船」と無関税の交易を行うことや、北洋方面に向かうラッコ・オットセイ猟船の銃手などとして雇用され、結果として「日本帝国」の外部に出稼ぎに出ることについては、事実上黙認していた。こうした状況の中で、当該期における小笠原諸島の先住移民が、それまで海と島々を生きる移動民・移住民として培ってきた労働の技法を活かしながら、ときには「日本帝国」の国境すら超える生活世界を形成していたことを、研究代表者は明らかにした。 なお、以上の分析は、主としてこれまで各所から収集してきた文献資料や聴き取り調査に基づくが、情報が膨大なものにわたるため、研究補助者に依頼してデータの整理を依頼した。
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