2003 Fiscal Year Annual Research Report
在宅障害老人の家族介護者におけるストレスに関する実証的研究
Project/Area Number |
03J03667
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安部 幸志 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高齢者 / 介護 / ストレス / 心理学 / 家族 / 社会学 / 社会福祉 |
Research Abstract |
本年度における研究目的は、家族介護者のストレスの縦断的変化や我が国における介護ストレスの特徴などを捉えることであった。そのため、平成13年から14年度にかけて行った調査データに対し、様々な方面から分析を行った。まず、高齢者の要介護度の変化を捉え、上昇・変化なし・低下の3群に分割し、それに併せて介護者のストレスがどのように変化したのか分析したところ、要介護度が上昇した群および変化しなかった群は介護者のストレスも何ら変化していなかった。しかし、要介護度が低下した群においては、身体的なストレスが半年前よりも低下していることが明らかとなった。次に、介護者のストレスをプロセスとして捉えることが可能であることを実証するため、Lawton et al.(1991)のストレスの2因子モデルを用いて分析を行った。その結果、要介護高齢者の様々な障害が介護者のストレス認知をもたらし、それが結果としてうつ気分やポジティブ感情の低下につながるというモデルがこれまでのデータにうまく適合することを明らかにした。この知見はアメリカにおいてはいくつか追試がなされ、同様の結果が得られているが、アジア圏では初となる知見である。また、同様に介護者のストレスに対する対処方略においても、我が国の独自性を明らかにするための分析を行った。その結果、従来、欧米において報告されたような前向きの対処のみがストレスを軽減するのではなく、適度にサービス等を利用し、要介護高齢者との距離をうまくとるような対処方略が有効であることが示唆された。本年度は、この結果をもとに、さらにその知見に対する理解を深めるため、数人の高齢者およびその介護者を対象に質的調査を行った。最終的に、これらを鑑みると、本年度の目的である家族介護者のストレスにおける縦断的変化やその特徴に関する知見の蓄積については、ある程度果たすことが出来たと考えられる。
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[Publications] 安部幸志: "在宅で障害を有する高齢者を介護する家族の抑うつ:性別および続柄による差異の検討"家族心理学研究. 17(1). 25-34 (2003)
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[Publications] 安部幸志: "高齢者を介護する家族のストレスと心理的安寧に関する実証的研究"人間科学研究. 5. 47-57 (2003)
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[Publications] Abe, K., Kashiwagi, T., Tsuneto, S.: "Coping strategies and its effects on depression among caregivers of impaired elders in Japan."Aging & Mental Health. 7(3). 207-211 (2003)
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[Publications] Abe, K., Tsuneto, S., Kashiwagi, T.: "An adaptation of the two-factor model of caregiving appraisal and psychological well-being to Japanese family caregivers."The Gerontologist. 43(special issue 1). 122 (2003)
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[Publications] 安部幸志, 恒藤暁, 柏木哲夫: "高齢者の要介護度と家族介護者におけるストレスとの関連-縦断的データを用いた検討-"老年社会科学. 25(2). 217 (2003)