2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J03679
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡 定紀 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 形態知覚 / 脳波 / 物体認識 / 順応 |
Research Abstract |
本研究の目的は、形態知覚において一つのまとまった物体認識へ統合される情報処理過程を、心理物理学的・神経心理学・計算論的研究により解明することである。また研究計画として、ある視覚刺激を呈示したときの脳内活動を、EEG等の装置を用いて測定することを掲げた。今年度の研究対象は、実験刺激として局所的特徴を操作するのに有効なランダムドット刺激を用い、知覚的に形態性を持たないランダムなパターンとして知覚されるドット集合から形態性を持ったドット集合へと切り替わる時の脳内活動をEEGで計測することであった。まとまりのあるパターンとして同心円、放射状、平行線の3つをテスト刺激として用い、ランダムパターンのデータと比較した。これにより大局的な統合過程に関連付けられる脳内活動を選択的に抽出する事が可能となる。その結果、同心円への統合過程の脳内活動が、放射状や平行線に比べて大きくなることが解明された。その応答潜時は、刺激呈示後180msecから230msecの間に行われていると考えられる。また同心円応答は、反応後1-2秒において減衰することが分かった。これは知覚現象によく見られる順応過程を示唆しており、近年の神経生理学的研究によると、前線状皮質の神経細胞の発火において、この秒スケールの順応がよく見られるという結果と対応付けられる。さらに心理物理実験によれば、同心円が最も知覚されやすく、その次に放射状、そして平行線の順に知覚的にまとまり易さが並べられるという先行研究が存在し、また一例ではあるがその過程と順応過程との関係を報告した研究も存在する。本研究の結果はこれらの先行研究を矛盾無く統合するものであると言え、現在の形態知覚研究において重要な神経心理学的証拠となった。この研究結果は、ヨーロッパ視知覚会議(European Conference on Visual Perception 2003)で発表した。
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Research Products
(1 results)