2003 Fiscal Year Annual Research Report
無限次元確率過程に対するマリアヴァン解析の理論と応用
Project/Area Number |
03J03706
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河備 浩司 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | Littlewood-Paley-Stein不等式 / Malliavin解析 / 拡散半群の微分評価 / Gibbs測度 / 確率偏微分方程式 / Harnack型不等式 / 回転 / Varadhan型短時間漸近評価 |
Research Abstract |
私は確率解析の中でも特に無限次元空間に値をとる拡散過程の解析的な性質を研究している.今年度はまずLittlewood-Paley-Stein不等式とその応用についての研究を行った.Littlewood-Paley-Stein不等式とはPoisson核を用いたL^p-ノルムの特徴付けであり,Sobolev空間の理論だけではなく,調和解析において重要なHardy空間の理論においても重要な役割を果たすことがE.M.Steinの仕事を先駆けとして知られている.その後,この不等式の一般化においては,確率論的なアプローチも用いられてきた.その内でもP.A.Meyerにより証明されたWiener空間上のOrnstein-Uhlenbeck半群に対するこの不等式が,Malliavin解析の理論の根底をなしていることは特筆すべきことである.近年では重川一郎-吉田伸生により,一般的な距離空間上の設定でBakry-EmeryのΓ_2の下からの有界性が,この不等式が成立する十分条件であることが示されている.しかしながら無限次元空間上の具体例を扱う際,この条件を確認するのは非常に困難である.私は上記の条件より弱い「拡散半群の微分評価の成立」という条件の下でこの不等式が成立する事を証明した。経路空間C(R, R^d)上のGibbs測度を可逆測度として持つ拡散半群に対する微分評価は,以前に私によってすでに得られていたので,Littlewood-Paley-Stein不等式がこの例に対して成り立つことが分かった.またこの応用としてSobolevノルムの関係も調べた. 次に無限次元空間上の非対称な拡散過程の中でも特に,回転を含む拡散過程の解析的性質を調べた.特に経路空間C(R, R^d)上のGibbs測度を不変測度として持つ回転項(物理的には磁場の影響と見なせる)を含む放物型確率偏微分方程式で記述された拡散過程に対する推移半群のgeneratorの定義域の確率論的な特徴付けを先の結果を用いて行い,Harnack型不等式とその応用として推移確率の下からのVaradhan型短時間漸近評価を得た.
|