2004 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ電磁波パルスを用いた溶媒分子の低振動モードのダイナミクスの研究
Project/Area Number |
03J03763
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 晃司 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | テラヘルツ電磁波 / 低振動モード / 凝縮相 / テラヘルツ時間領域分光 / ダイナミクス |
Research Abstract |
本年度は、テラヘルツ時間領域分光測定の実験精度および再現性を向上させ、液体の低振動モードのダイナミクスを精密に調べることを可能にした。特に、近年、新奇な液体として応用が期待されているイオン液体のテラヘルツ時間領域分光法を行った。測定したイオン液体は、1-アルキル-3メチルイミダゾリウムをカチオンとするイオン液体であり、アルキル鎖の長さを変えたものおよびアニオンを変えたものである。これらのイオン液体のテラヘルツスペクトルから次のことが示唆された。 (1)これまでに報告されていたイオン液体のテラヘルツスペクトルでは3つの緩和モードの和で説明がなされていたが、本研究により、この報告が誤りであることが判明した。これまでの報告では測定周波数領域が狭かったため、精緻な議論をするには不十分であったためと思われる。 (2)20cm^<-1>より低波数領域に緩和モードが観測され、主に、イミダゾリウムカチオンのアルキル鎖に強く依存した。アルキル鎖が長くなるにつれて、緩和時間が長くなることが示唆された。 (3)60cm^<-1>より高波数領域はアニオンに強く依存し、アニオンのライブレーションが観測されているものと考えている。 現在、ダイナミクスのモデルを用いた解析を進めている途中であり、より詳細な議論を進めているところである。 本年度に行った他の研究により、テラヘルツ時間領域分光法による物質の同定および状態に対する診断の応用を進展させた。特に、超高分子量ポリエチレン(人工関節などに利用)のγ線滅菌による劣化によって、テラヘルツ領域に吸収連続体が現れることを示した(Applied Physics Letters, volume 85,5194,2004)。これにより、超高分子量の劣化診断にテラヘルツ分光法が適用可能であることを示した。
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