2005 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ電磁波パルスを用いた溶媒分子の低振動モードのダイナミクスの研究
Project/Area Number |
03J03763
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 晃司 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | テラヘルツ電磁波 / 低振動モード / 凝縮相 / テラヘルツ時間領域分光 / ダイナミクス |
Research Abstract |
本年度は、新奇な液体として応用が期待されているイオン液体のテラヘルツ時間領域分光法を行い、液体の低振動数モードのダイナミクスを精密に調べた。測定したイオン液体は、1-アルキル-3メチルイミダゾリウムおよびテトラアルキルアンモニウムをカチオンとするイオン液体であり、アルキル鎖の長さを変えたものおよびアニオンを変えたものである。これらのイオン液体のテラヘルツスペクトルから次のことが明らかになった。 (1)これまでに報告されていたイオン液体のテラヘルツスペクトルの解釈(3つの緩和モードによる解釈)が誤りであること示した。 (2)イオン液体のテラヘルツ領域には、屈折率の多段階の分散カーブ、およびそれに対応する消衰係数のピークが観測される。従来の有機溶媒ではこのような構造を持ったテラヘルツスペクトルは観測されず、イオン液体の分子間モードに関係するモードがテラヘルツ領域に観測されていることが判明した。 また、タンパク質の生理活性と低振動数モードダイナミクスとの相関を理解するため、タンパク質のテラヘルツスベクトルの水和依存性を調べた。実験では、、低温(10K)から常温までのテラヘルツスペクトルを測定し、その温度依存性を検討した。水和したタンパク質では、200K付近以上でテラヘルツ領域の吸収増加が急に立ち上がり、タンパク質の動的転移の存在を確認した。これは、200K以上において、低振動数モードが大きく活性化されていることを示しており、そのモードの同定を行うため、タンパク質の分子動力学計算を行っている。
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