2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J03768
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和田 亮一 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 遺伝的多様化 / 大腸菌 / 連続培養系 / グルタミン合成酵素 / 菌体間相互作用 / GFP / 表現型 / セルソータ |
Research Abstract |
生物進化に重要な役割を果たしていると考えられる遺伝的多様化の過程を実験室内で再現すること、そしてこの過程において生物集団内での個体間の表現型の違いがどのような役割を演じているかを解析することを目的として研究を行っている。材料としては、世代時間が短く、より多くの世代を経過した変化の過程が比較的容易に観察できる大腸菌を用いた。 まず、実験で用いる菌株の作成を行った。大腸菌ゲノムのグルタミン合成酵素をコードする部位を、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein : GFP)とグルタミン合成酵素との融合タンパク質をコードした塩基配列で組み換えた株を作成した。このタンパク質を発現させるためのプロモータとして数種類を試してみたところ、Tetプロモータの場合がセルソータにおけるGFP蛍光強度が一番強かったので、これを採用することにした。できた株のグルタミン合成酵素遺伝子を活性の低い配列で置き換えた株を作成し、この株を親株としてグルタミン合成酵素遺伝子に変異を加え、60クローンからなる第一世代のライブラリを作成した。 次に、第一世代のライブラリを連続培養し、遺伝的多様化過程の観察を試みた。この培養槽内には、窒素源としてはグルタミン酸しか存在していない。従って、グルタミン合成酵素遺伝子の配列や発現量の違いに対して選択がかかる仕組みになっているはずである。しかしながら、24時間ごとにサンプリングを行い、槽内の菌体集団を構成する遺伝型の種類と割合についてその時間的変化を追ってみたところ、最終的に残ったのはグルタミン合成酵素遺伝子の途中で欠失が起こり、グルタミン合成能力がないと思われる株ばかりであった。これらの欠失クローンは培養中の変異によって生じたものではなく、もとのライブラリ中に既に混ざっていたものであることが分かったので、現在これらのクローンをライブラリから除いて、再び培養を行っているところである。 今後は、培養が終了したら、槽内の各遺伝子型が表現型空間においてどのように分布しているかをセルソータで解析する。そして、これらの遺伝子型とグルタミン合成酵素の発現レベルの関係について議論したい。また、多様化の過程で生き残ってきた株のグルタミン合成酵素の活性測定も行う予定である。
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