2004 Fiscal Year Annual Research Report
バキュロウイルス糖鎖エンベロープ蛋白質の哺乳動物における自然免疫誘発機序の解明
Project/Area Number |
03J03771
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阿部 隆之 大阪大学, 微生物病研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 自然免疫 / Toll Like Receptor / バキュロウイルス / 粘膜免疫 / インフルエンザウイルス |
Research Abstract |
バキュロウイルスは二本鎖の環状DNAを遺伝子として持つ昆虫病原ウイルスで、昆虫細胞内での組み換え蛋白質発現系システムとして広く汎用されている。また、近年では哺乳動物細胞にも増殖することなく、且つ効率良く外来遺伝子を導入できることが明らかとなり、新しい遺伝子治療用ベクターとしての応用が期待されている。我々はこのバキュロウイルスのマウス固体への遺伝子導入実験の過程で、野生型のバキュロウイルスを経鼻接種することによりマクロファージを主体とする自然免疫系が誘導され、致死的なインフルエンザウイルスの感染に対して強い抵抗性が付与されることを見い出した。また、他の接種経路(筋肉内、皮下、腹腔内、静脈内)における防御効果も詳細に検討した結果、鼻腔内で最も高い感染防御効果が認められたことから、病原微生物などの初期感染経路において重要な粘膜免疫を強く活性できることが示された。さらに、近年、自然免疫認識受容体として見い出されたToll Like Receptor (TLR)及びそのシグナル伝達アダプター分子であるMyD88遺伝子を欠損したノックアウトマウスを用いた解析から、バキュロウイルスによる自然免疫誘導にはTLR9とバキュロウイルスのウイルスDNAゲノムとの相互作用が重要であることが示された。また、バキュロウイルスによるTLR9シグナル活性誘導は、クロロキンなどのエンドソーム内へのプロトン流入を阻止する薬剤にて阻害されたことから、ウイルス感染後の脱殻したウイルスDNAゲノムが細胞内腔に局在しているTLR9と相互作用した結果誘導されたシグナル応答である可能性が示唆された。
|