2004 Fiscal Year Annual Research Report
高度好熱菌グリシン開裂系超分子複合体の立体構造と精密制御機構
Project/Area Number |
03J03803
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中井 忠志 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | グリシン開裂系 / 多酵素複合体 / 超分子複合体 / 高度好熱菌 / 構造生物学 / 結晶構造解析 / グリシンデカルボキシラーゼ / 共発現 |
Research Abstract |
グリシンの生体内での分解反応は4種類のタンパク質(P, H, T, L)からなるグリシン開裂系(GCS)によって触媒される。本研究は、GCSの構成タンパク質さらにはそれらの複合体の結晶構造解析を行うことにより、代謝経路全体を原子レベルで解明することを目的としている。本年度は高度好熱菌Thermus thermophilus (Tth) HB8由来のPタンパク質の構造解析を行った。Tth Pタンパク質はα_2β_2テトラマー(分子量20万)のピリドキサールリン酸依存性酵素(PLP酵素)であり、GCSの第一段階の脱炭酸反応を触媒する。まず、Pタンパク質(ホロ酵素)の構造を水銀誘導体を用いたSIRAS法により決定した。Pタンパク質はαβダイマーが非結晶学的2回軸で関係付けられた(αβ)_2テトラマー構造をとる。Pタンパク質は、α鎖とβ鎖の間でアミノ酸配列に22%の同一性をもつが、立体構造でも類似性があり二次構造のトポロジーはほぼ同じであることがわかった。Pタンパク質はアミノ酸配列の類似性からfold type IのPLP酵素に分類されている。構造既知のfold type IのPLP酵素は例外なくα_2ダイマーを基本単位にもつのに対し、Pタンパク質はαβダイマーを基本単位とし活性部位を構成するという特異な構造をもつことがわかった。また、ホロ酵素以外に、PLPを含まないアポ酵素およびホロ酵素・基質アナログ複合体の構造解析を行い、補酵素および基質の認識など反応に重要と考えられる残基を同定した。それらは他の生物種でも高度に保存されていることから、Pタンパク質の触媒機構は基本的には生物間で共通であることが示唆された。一方、NKH患者の約80%がPタンパク質に変異をもつが、Tth Pタンパク質の立体構造に基づいて大部分の変異について、それらがどのように酵素活性の消失を引き起こすのかを説明することができた。この結果については論文を執筆し、EMBO Journal誌に採択が決定している。
|
Research Products
(2 results)