2003 Fiscal Year Annual Research Report
16、17世紀におけるヴァラッロのサクロ・モンテに見る美術制作とその受容
Project/Area Number |
03J03854
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大野 陽子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イタリア美術 / 16世紀 / 17世紀 / 対抗宗教改革 / サクロ・モンテ |
Research Abstract |
本年度は、16世紀半ばに北イタリアで確立しつつあった対抗宗教改革期の芸術観が同時代のサクロ・モンテの造営に影響を及ぼしたかどうかを押さえるという観点から研究調査を進めた。そのためヴァラッロでの実地調査、写真撮影に加え、ノヴァーラ、ヴァラッロ古文書館ならびにミラノの主要図書館で同時代の史料及び後世の修復記録等を収集した。16世紀後半にサクロ・モンテで完成した諸礼拝堂の実現過程を追うとともに、対抗宗教改革期における宗教芸術への考え方を把握することに努めた。その建設と内部装飾の制作が対抗宗教改革期の芸術観が確立した時期に一致する第一礼拝堂に焦点を絞り、調査を深め、その成果を、論文「16世紀後半におけるヴァラッロのサクロ・モンテ礼拝堂装飾の変容-第一礼拝堂<アダムとエバ>を中心に-」にまとめた。 これに平行して、17世紀に入ってノヴァーラ司教の指導下に完成した諸礼拝堂に関する調査を、礼拝堂の実地調査、古文書館での同時代資料(司教の指示書、芸術家への依頼書)の収集、精読という手順でおこなった。また当時の作品受容状況を把握すべく、同時代に出版された巡礼者向け案内書を閲覧した。さらに17世紀の諸礼拝堂で内部装飾に従事した画家モラッツォーネとタンツィオ・ダ・ヴァラッロに着目し、彼らが司教の指示をいかに実現したのか、彼らの画業の中で、ひいてはイタリア美術史上でのサクロ・モンテでの彼らの作品の位置を見極めるという視点から、サクロ・モンテの礼拝堂の実地調査に加え、両者がミラノを始めとする北イタリアの諸都市(ノヴァーラ、コモ、ヴァレーゼなど)で制作した作品を実見し分析した。また、彼らがサクロ・モンテでの活動以前に滞在していたローマやナポリでの経験を押さえるために、同地で16世紀末から17世紀初頭に制作された芸術作品をも実見した。これらの調査の成果は来年度、美術史学誌に投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)