2003 Fiscal Year Annual Research Report
合理的習慣形成に伴う景気変動及び経済成長の理論分析
Project/Area Number |
03J03866
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 貴之 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マクロ経済学 / 合理的習慣形成 / 不況 / 失業 |
Research Abstract |
1.「習慣形成、不可逆的資本投資、および失業」 合理的習慣形成モデルに不可逆的な資本投資を導入し、賃金率の水準に関わらず失業が発生する事を示した。また、そのようにして発生した非自発的な失業は厚生を低下させるため、需要を刺激する財政支出が厚生の観点より有益となる事を示した。本研究にて示された失業を伴う不況は、好景気の後で発生しやすく、また習慣持続性が強い場合には景気回復は長期間を要する事が示された。 2.「習慣と財政政策乗数」 不完全競争モデルを用いた既存の研究においては、均衡財政支出は乗数効果を持つが、一方で必ず民間消費を減らし厚生を低下させるという結論を得ていた。しかし不完全競争モデルに習慣形成の要素を取り込む事で本研究は以下の新たな結論を引き出した。(1)生産面で収益逓増構造がある時、均衡財政支出は民間消費と厚生を改善し、消費における習慣形成はそれを強化する。(2)生産面に収益逓増構造が無い時でさえも、余暇に関する習慣形成を考慮すると均衡財政支出は民間消費および厚生を改善し得る。 3.「不況期の負債政策の厚生分析」 完全雇用を達成している好況期において国債発行は必ず将来世代の負担となる。しかし非自発的な失業を有する不況期においては、国債発行は世代間の所得再分配効果を通じて総需要を刺激するため好況期とはかなり異なる含意を持つ。国債の発行総量が既に大きな経済においては更なる国債発行は好況期と同じく将来世代に負担を転嫁する。しかし国債の発行総量が未だ小さな経済では、更なる国債発行は雇用創出効果により全ての世代にとって有益な(パレート改善政策)となる事を示した。
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