2003 Fiscal Year Annual Research Report
味覚情報処理及び味覚嫌悪学習の脳内メカニズムに関する行動学的・電気生理学的研究
Project/Area Number |
03J03901
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
時田 賢一 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 味覚嫌悪学習 / 結合腕傍核 / 大脳皮質味覚野 / 扁桃体中心核 |
Research Abstract |
本研究では、味覚嫌悪学習において重要な役割を果たすとされる結合腕傍核におけるニューロン応答性の学習獲得による可塑的変化と、上位中枢からの下行性制御様式を明らかにするため、ラットを用いて行った行動神経科学的実験をおこなった。味覚嫌悪学習を獲得させた後、条件刺激として用いた食塩に対して結合腕傍核ニューロンの応答性が増大すること、そしてこの増大はアミロライド感受性食塩ベストニューロンにおいてのみ生じていることを明らかにした。また、前脳部電気刺激実験および除脳実験の結果から、この応答性の増大には少なくとも扁桃体中心核からの興奮性の入力が関与していることが示唆された。Fos蛋白質をニューロンの興奮の指標とした免疫組織化学的実験では、上記の電気生理学的実験の結果を確認するとともに、条件刺激呈示によって結合腕傍核の内部内側亜核と外部外側亜核の活動が増加すること、アミロライド感受性ニューロンは内部内側亜核に存在することを明らかにした。さらに、条件味刺激に対する内部内側亜核ニューロンの応答性増大は長期にわたり保持されるにもかかわらず、行動上は学習が徐々に消去されていくことを明らかにした。本研究の結果は、味覚嫌悪学習の神経機構に関する新しい知見を導入しただけでなく、より一般的な学習・記憶の神経機構の解明と、ヒトの行動の背後にある脳機序の理解に大きく貢献するものと思われる。 以上の結果は、日本神経科学会、日本味と匂学会、The Society for the Study of Ingestive Behaviorなどで発表した。また、電気生理学的実験の結果はJournal of Neurophysiology誌に受理され、現在印刷中である。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 時田賢一, 志村剛, 山本隆: "味覚嫌悪学習想起時におけるラット橋結合腕傍核の活動"日本味と匂学会誌. 10巻3号. 423-426 (2003)
-
[Publications] Tokita, K., Karadi, Z., Shimura, T., Yamamoto, T.: "Centrifugal inputs modulate taste aversion learning associated parabrachial neuronal activities"Journal of Neurophysiology. (in press). (2004)