2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J03926
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
木村 哲士 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 2次元超対称ゲージ理論 / 非線形模型 / 超共形場理論 / 超弦理論 |
Research Abstract |
今年度の研究は、非コンパクトなCalabi-Yau多様体上を伝播する超弦理論を様々な角度から記述することであった。すでに2001年に、私を含む大阪大学のグループが、非コンパクトなCalabi-Yau多様体の計量と、それを用いた非線形模型をあらわに記述することに成功している。これを超弦理論に適用するためには、共形場理論形式でも記述される事が望ましいが、非コンパクト性のために、その記述は困難である。そのため、今年度の研究は、上述の非線形模型を導出する、2次元超対称ゲージ理論を扱った。このゲージ理論の利点は、非線形模型だけではなかなか追求できない量子論的真空の構造などが比較的容易に調べられるところにある。具体的には、複素射影空間の超曲面をベースに持つ複素線束(これもCalabi-Yau多様体になる)を真空空間として与えるゲージ理論を考えた。その結果分かったことは、FIパラメータと呼ばれる媒介変数が正の時は非線形模型が実現される一方で、負の場合には、変形されたLandau-Ginzburg理論など3種類の低エネルギー有効理論が登場することである。それらは互いに密接な関係にあり、相転移で繋がっている。しかし、ここでも、考えている多様体が非コンパクトであるため、Landau-Ginzburg理論の記述が量子論的には完全に定義されているものになっていない。そういった怪しい部分を追求するため、今度はゲージ理論のT双対な模型を考えた。これはすでにHoriとVafaによって考案されていたものであるが、これは汎関数積分の形で理論を考察し、低エネルギー有効理論を求める方法であり、量子論的にも完全に定式化された記述を与えることが可能である。上述の理論にT双対を施すことで分かったことは、低エネルギー極限で登場する変形されたLandau-Ginzburg理論は、実はgauged WZW模型、もしくはLiouville理論と、well-definedなLandau-Ginzburg理論が互いに結合した形で記述されることが分かった。これにより、当初考えていた非線形模型の超弦理論としての記述は、コンパクトな方向の物理はLandau-Ginzburg理論で、非コンパクトな方向の物理はLiouville理論でそれぞれ局所的に記述され、それら2つの理論は非自明な形で結合されていることがわかった。今後の課題は、ここから厳密なスペクトラムを導出することである。
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Research Products
(1 results)