2003 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性光半導体を用いたスピン境界特性と磁気・光・電子統合機能素子創製の基礎研究
Project/Area Number |
03J03939
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 一成 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | オプトスピントロニクス / 強磁性光半導体 / スピン境界 / 統合機能素子 / 機能性酸化物 / パルスレーザー堆積法 |
Research Abstract |
機能性酸化物材料には,発光電気光学効果,強誘電性,巨大磁気抵抗効果,高温超伝導など様々な魅力的な物性があるが,これまでの利用はほとんど,それぞれの酸化物がもつ機能のみを活かしたものであった.これら酸化物材料の機能を有機的に結び付けることで,将来の高度情報通信を支える基幹技術として磁気・光・電子の融合した統合機能デバイスを実現させることが酸化物オプトスピントロニクスの狙いである.本研究課題では酸化物オプトスピントロニクス材料をパルスレーザー堆積(PLD)法によって成長させ,それらの磁気-伝導特性,磁気-発光特性について一連の系統的な基礎研究をおこなった. スピンバウンダリの検証のために,比較的既知の強磁性ハーフメタルであるLa_<1-x>Sr_xMnO_3(LSMO)を選択した.格子不整合の大きい基板上では,LSMOはナノスケールのコラム状に成長し,この無数のバウンダリが粒界磁気抵抗(IMR)効果に大きく寄与する.LSMOナノコラムを用いて傾角境界接合を形成する技術を確立し,これを『ティルティド・ナノコラム・バウンダリ』と名付けた.これによって初めて高角度スピンバウンダリの基礎実験が可能となったので,スピン依存トンネル効果に関するJulliereモデルによる検証をおこなった.実験と理論を比較した結果,良い一致を示した.粒界を流れる電流が,本当にトンネル接合を介して流れているのか,というこれまで混沌としていた議論に決着をつけたものであり,学術的に大きな意味を持っている結果である. 次に,オプトスピントロニクス応用を目指して,母体をワイドギャップ半導体ZnOとし,磁性イオンドープを試みた.室温強磁性半導体の有力候補であるZn_<1-x>Cr_xO(ZCO)の材料創製,評価をおこない,低温4.2Kにおいて,束縛励起子の発光ピークが1Tにおいて約3倍に増大するという,磁気フォトルミネセンスが観測された.また,ピーク位置もわずかながら高エネルギー側にシフト(ブルーシフト)した.直接測定が困難な有効Cr濃度_<Xeff>を求めるために,そのシフトエネルギーを束縛磁気ポーラロン(BMP)効果のモデルで計算した結果と比較する方法を導入した.まだ乗り越えるべき障壁は多く残されているが,磁性半導体としての可能性を示唆する多くの知見を得ていることは今後の研究の展開にとって大きく貢献する内容である.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 佐藤 一成, 他: "Magnetic and optical properties of novel magnetic semiconductor Zn_<1-x>Cr_xO and its application to all oxide p-i-n diode"Applied Surface Science. 216. 603-606 (2003)
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[Publications] 佐藤 一成, 他: "Magneto-Photoluminescence of Novel Magnetic Semiconductor Zn_<1-x>Cr_xO Grown by PLD Method"Applied Physics A. (印刷中). (2004)