Research Abstract |
本研究において,円孔配列型金属フォトニック結晶の透過特性に関する研究を行った.一般に,光(電磁波)の波長より小さい直径を有する金属開孔の透過率はきわめて低い.しかし,金属開孔を周期的に配列することにより,非常に透過率が増大する,光の異常透過現象が報告されている.本研究では,この現象の物理的原因を,テラヘルツ電磁波帯において詳細に調べ,またその過程の中で金属フォトニック結晶に関して新たな光学特性を見いだした.以下に研究の概要を示す. まず前年,透過スペクトルの入射角度依存性,開孔数依存性の実験結果から,光の異常透過現象には表面プラズモンが非常に重要な役割を果たすことを確認した.この物理描像に対するさらなる証拠を得るため,金属表面に誘電体を添付し,そのときの透過スペクトルの変化を調べた.その結果,透過スペクトルは金属表面の状態に非常に敏感に反応した.これは表面プラズモンの存在及び,異常透過現象への寄与を裏付ける,非常に重要な結果である. また前年,金属フォトニック結晶を2層積層することにより,透過特性のチューニングが可能であることを見いだした.これは2層間のファブリー・ペロー効果に加え,表面プラズモンのカップリングによるものであることを確認した.今回さらに,開孔径の異なる積層型金属フォトニック結晶を作製し,単層型金属フォトニック結晶では透過率が非常に小さい,波長以下の微小開孔の透過率が非常に増強される現象を見いだした.この結果は,光やテラヘルツ電磁波を波長以下の領域に,高効率で閉じこめることが可能であることを意味しており,ニアフィールド光学デバイス及び,将来のプラズモニクスデバイスの実現に関して,非常に重要な知見を与えるものである.
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