2003 Fiscal Year Annual Research Report
単一粒子レベルでみた光圧による溶液中ナノ粒子の凝集ダイナミクス
Project/Area Number |
03J04103
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
江田 千絵 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | レーザートラッピング / ナノ粒子 / コロイド / 蛍光相関分光 / 二光子励起蛍光 |
Research Abstract |
本研究はコロイド分散系における核生成の動的機構を明らかにすることを目的とし、ナノ粒子を集光レーザービームの光圧により捕捉し、そこで起こる粒子の集合プロセスをリアルタイムで一粒ずつ追跡することにより、初期段階の核形成の過程を解明する。本研究の遂行にあたり、正立顕微鏡とYAGレーザーからなる現有の光捕捉システムを発展させ、光捕捉した単一粒子の二光子励起蛍光検出および、蛍光相関分光を同時に測定することが可能なシステムを構築した。具体的には、光検出器に量子収率の高いアバランシェフォトダイオードを用いて高感度化を計り、粒径40nm粒子の単一粒子計測が可能となった。さらに光圧ポテンシャル中におけるナノ粒子の運動や会合状態を調べるためにコリレーターを導入し、光捕捉したナノ粒子の蛍光相関分光測定を行った。試料には蛍光色素を含有する、粒径100nm、40nmのポリスチレン粒子を用いた。 粒径100nm粒子の分散液にレーザー光を集光すると、粒子が1個ずつ光捕捉される様子が観測された。これに対して粒径40nm粒子の場合、粒子の集合過程が照射レーザー光強度により変化した。特に低光強度条件(150-450mW)では粒子が2-3個の単位で光捕捉され、脱離する現象がみられた。光捕捉された粒子の滞在時間τ_<esc>を解析した結果、滞在時間は捕捉粒子数と相関があり、計算により導出した会合粒子の滞在時間とも良く一致した。また40nm粒子を光捕捉した状態で蛍光相関分光測定を行い、自己相関関数の減衰の時定数を調べたところ、単一粒子より複数個捕捉された粒子の方が小さいことがわかった。他の結果より粒径が大きく、レーザー光強度が高い程、自己相関関数の減衰の時定数が小さくなることから、上述の複数個の粒子は会合していると考えられる。さらに2次元モンテカルロシミュレーションを構築し、粒子間相互作用力・照射レーザー光強度をパラメータとして実験結果と比較した。これらの結果より、粒子1個では安定に光捕捉されない40nm粒子は集光位置における局所的な濃度の増加に伴い会合体を形成し、光捕捉されるというモデルを提案した。上記の研究成果は第21回国際光化学会議および第56回コロイドおよび界面化学討論会において成果発表を行い、現在学術論文誌に投稿準備中である。
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