2004 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類雄性生殖幹細胞系をモデルとした組織幹細胞の維持・増殖・分化機構の解析
Project/Area Number |
03J04138
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田所 優子 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 幹細胞 / 精子形成 / Oct-3 / 4 / c-kit / Kitリガンド |
Research Abstract |
本研究の目的は、哺乳類雄性生殖幹細胞と支持細胞との密接な関係において幹細胞がいかにして制御されているかを解明するために、支持細胞側からの調節因子を特定することである。この解析を進めるために、Oct-3/4とc-kitの分子マーカーを利用して各細胞集団を分離し、各細胞種の幹細胞活性の検定と特質の解析を行った。 まず種々の精細胞分化障害マウス精巣における生殖幹細胞の増殖機構を解析することにより、生殖幹細胞の増殖がFSH/GDNF経路を介したフィードバック機構により制御されていることを明らかにした。またこの解析過程で、生殖幹細胞がOct-3/4(+)と(-)の2つの細胞集団から成っていることを見出し、分化障害時にはFSH/GDNF経路により2つの幹細胞群のバランスが変化することを示した。さらに生体電気穿孔法を使ったグリア細胞栄養因子(GDNF)の過剰刺激により大量の生殖幹細胞を集めることが可能となったことから、生殖幹細胞の運命決定におけるc-kit/幹細胞因子の役割を検討した。GDNFにより生体内で増殖させた生殖幹細胞を調べた結果、生殖幹細胞はどれも新規の糖鎖修飾様式を示す幹細胞特異的に現れる未分化細胞タイプのc-kitを保持していた。この未分化細胞タイプc-kitは遷移状態生殖幹細胞として一時的に細胞表面に提示されるが、ここに分泌型幹細胞因子が存在するとその刺激により生殖幹細胞はc-kit受容体を細胞内に取り込み、分化が阻害された。また分泌型ではなく膜型幹細胞因子が存在すると分化細胞へと進むことがこれまでに示されている。このように、生殖幹細胞には未分化と分化のどちらにも移行可能な遷移状態の幹細胞が存在し、分泌型/膜型幹細胞因子の競合状態の中で生殖幹細胞の運命が決定されていることが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)