2004 Fiscal Year Annual Research Report
新しい人畜共通伝染病:ボルナ病ウイルスの病原性の解明と早期診断法の確立
Project/Area Number |
03J04145
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 真紀子 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / 人畜共通伝染病 / amphoterin / HSP70 |
Research Abstract |
ボルナ病ウイルス(BDV)の主要ウイルス抗原であるリン酸化蛋白質が、宿主の多機能蛋白質amphoterinと特異的に結合し、その神経突起伸長機能や転写活性機能を強く抑制していることは、当研究室により明らかにされている。 細胞にストレスを負荷すると、非感染細胞ではストレス負荷に応答してamphoterinの発現量が増加したのに対し、BDV持続感染細胞においては、発現量の増加は認められなかった。また、BDV持続感染細胞において、顕著な細胞の円形化、培養プレートからの剥離が認められ、細胞の生存率は低下していた。これは、BDV持続感染による細胞骨格・接着維持能力の低下および生存維持能力の低下によるものであることが明らかとなった。Amphoterinは、神経突起伸長因子として成熟期の脳神経回路網の形成に重要な役割を果たしているだけではなく、さまざまなストレス下においてその発現が増強され、神経細胞の生存維持にかかわっている蛋白質で、細胞骨格の制御にも関与している。今回得られた結果から、BDV持続感染によって、細胞骨格やストレス応答に関与するamphoterin機能にも低下が生じているものと考えられた。さらに、ストレス応答性の蛋白質として、熱ショック蛋白質(HSP)の発現誘導についても検討を行ったところ、非感染細胞ではストレス負荷に応答してHSP70蛋白質の発現量が増加したのに対し、BDV持続感染細胞においては、発現量の増加は認められなかった。また、HSP70 mRNAの発現も低下しており、BDV持続感染細胞のHSP70 mRNAの半減期が非感染細胞の半分以下に短縮していることが明らかとなった。 これらの結果からBDVの持続感染が細胞のさまざまなストレス応答能力を低下させていることが明らかとなり、これはBDVの中枢神経病原性に深く関与するものと考えられた。
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Research Products
(1 results)