2004 Fiscal Year Annual Research Report
ボルナ病ウイルスの中枢神経系への持続感染とプリオン病態
Project/Area Number |
03J04146
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
MADIHA Salah Ivbahim 大阪大学, 微生物病研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / プリオン / 持続感染 / グリコシレーション / 糖転移酵素 / 脳炎 / 精神疾患 / C6 |
Research Abstract |
ボルナ病は、ウマに脳膜脳脊髄炎をもたらす疾患である。ボルナ病を発症したウマは、歩行不全、知覚過敏などの神経症状を呈する。その後、この疾患はボルナ病ウイルス(Borna Disease Virus : BDV)と名付けられたウイルスの中枢神経系への感染が原因で引き起こされることが明らかとなった。BDVは、ウマの他にヒツジ、ウシ、ネコ、イヌ、ダチョウなどの動物にも自然感染している。さらに、1985年にドイツ・ギーセン大学のRottらにより、精神分裂病患者の脳脊髄液中にBDVに対する抗体が存在することが報告され、BDVがヒトにも病原性を持つ可能性が初めて示唆され、BDVと内因性精神疾患との関連性が注目されるようになった。このように、BDVは広範に分布している神経親和性のウイルスであり、しかも感染複製による細胞障害能を持たないウイルスであることから、神経系細胞に容易に持続感染を成立する。一方、神経系細胞に発現している正常型プリオン蛋白質は、ストレス応答性の蛋白質として認識されている。そこで、BDVの持続感染を受けた神経系細胞が、プリオン蛋白質発現に何らかの影響を受けるのではないかと考え、非感染とBDV持続感染間でプリオン蛋白質発現について比較検討した。その結果、非感染C6(ラットグリオーマ由来)細胞では3種類のプリオン蛋白質(2糖、1糖、0糖付加型)が同定できたが、BDV持続感染細胞では0糖付加型のみの発現が確認できた。プリオン蛋白質の発現量には大きな違いが認められなかった。このBDV持続感染細胞で認められたプリオン蛋白質の電気泳動上の移動度は、非感染細胞に糖付加をブロックするツニカマイシン存在下で培養した場合のものに一致したことから、BDV持続感染により、糖付加のための転移酵素への影響が現れると考えられた。0糖付加型のプリオン蛋白質は、異常型プリオン蛋白質への標的とする報告も多く、今後BDVの持続感染が与える、プリオン病原性獲得機序への影響について検討することは重要である。
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