2005 Fiscal Year Annual Research Report
π-d系の理論的解析,純有機磁性伝導体のモデル化と量子化学的DMRG法の開発
Project/Area Number |
03J04302
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷口 岳志 大阪大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電荷移動錯体 / 分子磁性・伝導体 / 密度汎関数計算 / 統計力学計算 / 有効交換積分 / 電子移動積分 / マルチスケール / 物質設計 |
Research Abstract |
(BDTA)[Ni(mnt)_2](BDTA:1,3,2-ベンゾジチアゾリル,mnt:マレオニトリルジチオレート)は電荷移動(CT)錯体である.X線結晶構造解析に基づき,まずCTの起こる分子対で安定なものを特定し,次にそれらの対に関して分子間の有効交換積分(J)値を第一原理的に計算した.分子間磁気的相互作用は、b軸に172cm^<-1>という値を持ち,ca方向には-1.5cm^<-1>であった.その強磁性的相互作用の原因は,スピンサイト間の軌道の重なりが消失して,交換相互作用の効果のみが残っていることである.一次元周期境界条件を附した密度汎関数計算から,実験的に得られたCTが主にca平面方向であることが,定量的に裏付けられた.得られたJ値を用から帯磁率を計算すると,5K以上で実験とほぼ一致する結果となった.さらに他の組合せについても解析した. このように,分子磁性体の性質をミクロスケールの相互作用に基づいて解析し,得られた相互作用のパラメータを用いてマクロスケールの観測量を再現するというプロセスを体系化し,実践した.ミクロスケールの相互作用は密度汎関数計算を用いて評価し,マクロスケールの観測量は密度行列繰り込み群(DMRG)法や量子モンテカルロ(QMC)法によって算出してきた.(ただし,QMCの適応範囲はDMGRより広いので,大抵はこちらを用いる方がよい.)このようにミクロ・マクロの両方のスケールについて高精度の数値計算が可能であるので,実在系の解析のみならず分子性物質の性質の予測といった物質設計にも用いることができる.
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Research Products
(3 results)