2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞の運命決定における神経ペプチドPACAPの役割の解明
Project/Area Number |
03J04349
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣瀬 惠 大阪大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 発生・分化 / 脳・神経 / 幹細胞 |
Research Abstract |
これまでに私は、McKayらの5段階を経る、ES細胞からの神経系細胞への分化過程において、ES細胞においても神経ペプチドPACAPおよびその特異的受容体遺伝子がわずかに発現し、神経系細胞分化にともなって、それらの遺伝子が発現上昇することを明らかにしてきた。また、PACAPが増殖因子であるbFGFに拮抗して、初代培養神経幹細胞の増殖を抑制し、神経細胞分化を促進する因子であることを示唆してきた。今回、ストローマ細胞PA6との共培養によるES細胞の神経系細胞分化誘導法によって培養した細胞においても、PACAP遺伝子の発現が顕著に増加していることが示された。また、薬物の短時間処置により細胞の分化系譜が決定するという報告があることから、初代培養神経幹細胞に対して、培養期間の始めの0.5から24時間PACAPを処置し、培養開始5日後に蛍光免疫染色により検討を行った。その結果、MAP2陽性細胞数はPACAP短時間処置では変化は認められなかった。一方、3時間のPACAP処置によってTuJ1陽性細胞数が増加することが示され、24時間処置によってもその増加の割合は同程度であった。 PACAPによる神経分化促進作用が、3時間のPACAP処置においても認められたことから、PACAP添加後3時間までの早い段階で、神経細胞への運命決定が行われている可能性があることが示された。 これらの知見は、PACAP及びその受容体が発生過程の脳で神経新生の起こる部位に発現していることからも、in vivoにおいてPACAPは幹細胞に対する他の増殖・分化シグナルと相互作用することにより、細胞運命の決定さらには神経系の構築に重要な役割を果たしていることを示唆するものと考えられる。
|
Research Products
(1 results)