2005 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学専用計算機MDGRAPE-2を用いた非中性プラズマの解析
Project/Area Number |
03J04406
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
八柳 祐一 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 負温度 / 点渦 / Onsager / エネルギースペクトル / 2点渦間距離分布 / MDGRAPE-2 / 専用計算機 |
Research Abstract |
円筒境界内に閉じ込められた強さが等しく正負同数の点渦系のダイナミクスについて,温度をパラメータとして理解することを目的とする研究である。なお,以下では温度の代わりに系のエネルギーをパラメータとして使用している。 これまでに,我々は,様々なエネルギー値からスタートした大規模時間発展シミュレーションよりエネルギー(温度)をパラメータにした時間漸近的平衡分布を得,低エネルギー(正温度)の場合には正負点渦が均一に混ざり合った分布となるのに対して,高エネルギー(負温度)の場合には同符号の点渦が凝集してできた塊(クランプ)がそれぞれの符号につき1個ずつあるダイポール状の分布になることを示し,負温度におけるクランピングに際した背景渦の重要な役割について明らかにしてきた。 今年度,我々は,2点渦間距離分布,およびエネルギースペクトル(k-スペクトル)に現れるエネルギー依存性について明らかにした。2点渦間距離分布は,ある点渦から見た他の点渦までの距離の分布を全点渦について測定し,距離の関数としてヒストグラム化したものである。正-正および正-負点渦間の2点渦間距離分布を,漸近的平衡分布に対して測定したところ,正温度の場合には同一の形状の一山分布になるのに対して,負温度の場合には正-正の分布の方が正-負の分布よりピークの位置が原点寄りになることがわかった。これは同符号点渦の凝集を定量的に特徴づける結果である。さらに,系の温度は隣接する2点渦間の距離分布に影響を与えるとの予想のもと,同符号2点渦間距離分布の原点での傾きを求めたところ,系の温度が負の場合は傾きが系のエネルギーに比例することを発見した。 また,漸近的平衡分布に対して測定したk-スペクトルでは,中波数領域での負のべきは正温度の場合に-1となるが,負温度の場合には,より傾きが大きく,その絶対値は系のエネルギーに比例する傾向があることがわかった。これは乱流理論において議論されているべきのユニバーサリティが真に不変なものではない可能性を示唆する結果である。 これらの特性は,統計力学において形式的に定義される「負温度」性が実際の力学系においてどのような特徴となって現れるかを明らかにしたという意味で,画期的な成果であると我々は考えている。
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Research Products
(3 results)