2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J04422
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡本 敏宏 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員SPD
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Keywords | 縮合多環式化合物 / パイ電子系化合物 / 16族元素 / ジアセチレン / 分子内三重環化反応 / 脱カルコゲン反応 / 電荷輸送特性 / サイクリックボルタンメトリー |
Research Abstract |
高平面性パイ共役骨格に16族元素を導入したヘテロアセン類やその類似のジカルコゲニド結合をもつ縮環多環式芳香族化合物は有望な電荷輸送性有機材料として期待できるが,効率的かつ一般的合成法の欠如のため,これまでこの分野に応用された例はほとんどない.新たな電荷輸送性有機材料の開発を目指し,16族元素を含む縮合多環式パイ電子系化合物の簡便な合成法の開発と物性について検討した. ビス(o-ブロモフェニル)ジアセチレンを出発原料に用い,t-BuLiによりジリチオ化した後,過剰量のカルコゲン(S, Se)と反応させることにより,分子内環化反応が進行し同時に三つの環の骨格形成がおこったジカルコゲニド結合をもつ縮合多環式化合物が得られることを見いだした.同様に,3-ブロモチエニル誘導体および3-ブロモベンゾチエニル誘導体を原料に用いることにより,環が五つおよび七つ縮環した化合物を合成することもできた.さらに,得られたジカルコゲニド結合をもつ化合物の脱カルコゲン反応について検討した結果,銅存在下,無溶媒で高温加熱することにより,ヘテロアセン系化合物へと容易に誘導できることも見いだした.得られたこれら一連の化合物の電気化学特性を明らかにするために,サイクリックボルタンメトリーを測定した.ジカルコゲニド結合をもつ化合物はヘテロアセン化合物よりも酸化されやすく,第一,第二酸化過程とも可逆に観測され,安定なラジカルカチオンとジカチオンを生成することが示唆された.それに対して,ヘテロアセン類は擬可逆な一電子酸化過程を示した.また,X線結晶構造解析を行ったところ,ジカルコゲニド結合をもつ化合物は中央の六員環の非平面性に起因し,ねじれたπ共役骨格構造をしているの対して,ヘテロアセン系化合物は,ほぼ平面構造をとり,ヘリンボーン状のパッキング構造を形成することがわかった.今後,これらの化合物の電荷輸送特性などの物性評価を行っていく予定である.(800字)
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