2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J04438
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川上 陽介 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 照世盃 / 清田たん叟 / 中国 / 白話 / 和刻本 / 唐本 / 佐伯文庫 |
Research Abstract |
すでに調査報告を済ませている『笑府』『開巻一笑』『四鳴蝉』に引き続いて、今年度は、和刻本の現存する中国白話小説作品『照世盃』の調査に取り組んだ。『照世盃』は、中国本土で刊本が伝わらず、長らく明和二(1765)年刊の和刻本によって読まれてきたが、清代康煕刊の唐本が、大分県佐伯市に佐伯文庫として保管される漢籍中に現存することが判明し、1988年、汲古書院よりその影印本が刊行された。大塚秀高氏は、その解題により、唐本から和刻本が作成される経緯について推察し、和刻本の版下原本は佐伯文庫本である可能性が非常に高いこと、これまで和刻本の訓点者は清田〓叟だと言われてきたが、その説には再考の必要があることを指摘された。これを受けて、近年、日中両国において公刊された諸本を整理し、唐本と和刻本との本文校訂作業を完了させた上で、和刻本に見られる訓点・左訓・欄外頭注および「読俗文三条」と題する序文の記述内容を詳細に吟味し直した結果を報告したものが、拙稿「『照世盃』の施訓者について」(『京都大学国文学論叢』第11号、2004年3月)である。今回の調査により、和刻本の版下原本は佐伯文庫本とは断定しがたいこと、「読俗文三条」第一条の記述は『照世盃』本文の訓訳作業に基づいて書かれたものであり、和刻本の施訓者とこの条文の作者とは同一人物であること(「読俗文三条」が清田〓叟の作であることは徳田武氏によってすでに論証されていたが、大塚秀高氏はこの条文の作者と施訓者とは別人であると主張していた)、また、和刻本の欄外頭注もまた清田〓叟によって作成されたものであること、以上三つの結論に達した。つまり、和刻本『照世盃』の施訓者は、従来目されていた通り、清田〓叟であることが確認されたのである。
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