2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J04449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長谷川 千尋 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 連歌 / 聖廟法楽千句 / 聖廟法楽千句注 / 兼載 / 三句め / て留 / あらまし / 治定 |
Research Abstract |
連歌の付句は、前句によく付くと同時に、打越から離れる、すなわち「三句め離るる」ように付けることが望まれる。「三句め」の語は、連歌用語として様々な場面で用いられるが、特に「打越に繋がる前句の意味を、付句で別の方向に転換させているとき」に用いられた場合、打越からどのように転じているのかを、その都度検証しなければならない。例えば、「何事か人の詞にもれぬらん/あひもあはずも名は立にけり」の句に対する「何事をも人はひはんする物なればなり。三句めの句也」(『竹聞』)の指摘は、疑問の意であった前句を、付句で反語に近い意味に転じたことを指して言ったものと考えられる。 兼載独吟『聖廟法楽千句』の古注の「三句め」の指摘を検討してゆくと、兼載は「て留」の前後の句で「三句め」の工夫を行っていることが知られる。「て留」の句は、その句を挟んで打越と前句が、ともに「〜した後、〜する」という付け方になりやすく、輪廻しやすいためである。例えば「里の砧にやどやからまし/はださむく山風送り日は暮て/君こずは又いかにあられむ」の三句は、打越も付句も日が暮れた後の行為になってしまわないよう、付句では「日は暮て君こずは」、「日が暮れてあなたが来なければ」と続けて読み、日が暮れたという前句を、まだ日は暮れていないことにすり替えてしまう。この技法は、兼載著『連歌延徳抄』にも「治定」を「あらまし」に転じる付様として説明されている。兼載の著書や聞書、その作品の古注には、同時代の宗祇のものと比べて、明らかに「三句め」の指摘が多く、注目すべきものである(以上は、「兼載「三句め」の技法」の論文にまとめる)。 「『聖廟法楽千句』試注」は、『聖廟法楽千句』の初折表八句について、兼載自筆奥書を持つ尊経閣文庫本の本文と四種類の古注を翻刻し、注釈を試みたものである。
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Research Products
(2 results)