2003 Fiscal Year Annual Research Report
推理論をめぐる仏教徒とジャイナ教徒の論争とその思想史的意義の考察
Project/Area Number |
03J04451
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
志賀 浄邦 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 仏教論理学 / ジャイナ論理学 / パートラスヴァーミン / 推理 / 証因の一条件 / 証因の三条件 / ダルマキールティ / ウパロサル |
Research Abstract |
研究課題としても掲げている仏教徒とジャイナ教徒の論争のうち,今年度は特にジャイナ教側の資料に焦点を当てた研究を試みた。ジャイナ教論理学の創設者の一人であるパートラスヴァーミンは,インド論理学史上極めて重要な人物であるにもかかわらず彼についての研究は今まで十分になされてこなかった。平成15年9月6・7日に仏教大学で行われた日本印度学仏教学会・第54回学術大会では,「三種の証因に対する異論についての一考察-ジャイナ教徒Patrasvaminに帰せられる見解をめぐって-」というタイトルの下,主にジャイナ教側の文献を用いることによって,このパートラスヴァーミンの思想の一断面の解明を試みた。その際,彼の年代特定のための新資料を提示しえたことが本発表の最大の功績であった。とりわけ仏教論理学派最大の巨匠ダルマキールティとの前後関係について明確な結論を導くことができたことで,混迷を極める7-8世紀インドの思想状況の解明に一石を投じることができたと考える。上記研究発表の成果,"Jaina objection against trividha-hetu : an opinion attributed to Patrasvamin"は,査読を経た後,平成15年12月に刊行された同学術大会紀要(1)『印度学仏教学研究』第52巻第1号に掲載された。さらに,平成14年12月に東大寺・南都仏教研究会への投稿論文「推理論をめぐる仏教徒とジャイナ教徒の論争-証因の三条件と一条件の対立を中心に-」が約1年間の校正期間を経て平成15年12月に出版に至ったことも合わせて付言しておきたい。 その他の研究動向としては,受入研究者である御牧克己教授の薦めで,チベットの宗義文献『ロサル宗義書』中ジャイナ章の校訂・翻訳に着手し,すでに仕上げの段階に移行しつつあることを挙げておかなければならない。同文献には,様々なトピックに関する仏教徒とジャイナ教徒の論争か詳細に記述されており,両学派の論争の様相を多角的に解明するための資料として極めて価値が高い。この研究の成果については,将来的にまとまった形で発表すべく準備を進めている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 志賀浄邦: "推理論をめぐる仏教徒とジャイナ教徒の論争-証因の三条件と一条件の対立を中心に-"南都仏教 第83号. 83号. 60-97 (2003)
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[Publications] Kiyokuni Shiga: "Jaina objection against trividha-hetu : an opinion attributed to Patrasvamin"印度学仏教学研究. 第52巻1号. 4-7 (2003)