Research Abstract |
本研究課題の目的は,高次のメタ表象を支える再帰的な認識として,とくに心的な高次のメタ表象である再帰的な心的状態の理解に焦点を絞り,いわゆる「心の理論」研究でいう「二次の心的状態の理解」に関する研究を発展させることである。平成16年度は,以下の3つの成果をあげることができた。 第1に,平成15年度の研究で残された課題であった「他者の行為(作為と不作為)の道徳的判断に関する二次の心的状態の理解」について,児童(小学1,3,5年生)を対象に実施した明確なデータとその詳細な分析から大きな知見を得ることができた。具体的には,以下のことが判明した。 1.二次の心的状態の理解を必要とする課題についての不備と,これを克服するために新しく用意した課題の有効性が明確になった 2.二次の心的状態の理解が必要になる道徳的判断において,1年生では難しく,3年生以降に正確な判断ができるようになること 3.二次の心的状態の理解と道徳的判断の間に,明確な関連が見られること 4.児童期には,作為と不作為の問には認識の難しさに差がないこと 第2に,上記の研究パラダイムについて,「作為と不作為の間には認識の難しさの差があるか」という問題をさらに詳細に探るために,対象年齢を下げ,幼児(4歳〜6歳)に実施した。具体的には,作為と不作為の課題を複数作成し,複数回の予備調査によって,作為と不作為それぞれの課題を厳選した。次に,それらの課題を幼児に呈示したところ,幼児においても作為と不作為の間には認識の難しさに差がなかった。 第3に,日常的なコミュニケーション場面における二次の心的状態の理解の重要性について,理論的にまとめなおすことができ,さらに発展して考察することができた。 上記の成果を2つの英語論文にまとめ,ヨーロッパの英文学術雑誌に投稿した(現在,2論文ともに審査中である)。
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