2005 Fiscal Year Annual Research Report
高次のメタ表象を支える再帰的な認識についての心理学的研究
Project/Area Number |
03J04477
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 創 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 二次の心的状態 / 作為 / 不作為 / 児童期 |
Research Abstract |
本研究の目的は,「高次のメタ表象を支える再帰的な認識」という点に着目し,こうした視点から人間の知性の有り様を明らかにすることであった。平成17年度は,以下の3つの成果をあげることができた。 (1)平成15〜16年度に,「他者の行為(作為と不作為)の道徳的判断に関する二次の心的状態の理解」について,児童(小学1,3,5年生)を対象に実施したが,そのデータを分析しなおし,考察を新たに加えた。その結果,以下のことが判明した。 A)二次の心的状態の理解を必要とする課題を複数作成したが,同一構造をしていても,有効な課題と有効でない課題に分かれた。この原因として,表面上のストーリーの違いなどの諸要因が,児童の課題に対する認識に大きく影響することが明確になった B)二次の心的状態の理解が必要になる道徳的判断において,1年生では難しく,3年生以降に正確な判断ができるようになること C)児童期には,作為と不作為の間には認識の難しさに差がないこと (2)上記の研究パラダイムについて,平成16年度に幼児(4歳〜6歳)を対象に「作為と不作為の間には認識の難しさの差があるか」を明らかにする研究を実施したが,課題に弱点があり,明確な結論を下せたとは言い難かった。そこで,平成17年度は,課題をアニメーション形式に作成しなおし,問題意識をより明確にして,新たに幼児を対象に実施した。その結果,作為と不作為の間には認識の難しさに差がないことが明らかになった。 (3)日常的なコミュニケーション場面において,「関連性理論」などの理論的知見を踏まえながら,二次の心的状態の理解の重要性をまとめなおすことができ,発展して考察することができた。 上記の(1)の成果は,英文学術雑誌に投稿した(現在,審査中である)。(2)は投稿準備中である。(3)は日本の学術雑誌に投稿した(現在,審査中である)。
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