2003 Fiscal Year Annual Research Report
経済発展における中国型市場連邦制の有効性の検証-不完備市場への補完的機能-
Project/Area Number |
03J04500
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白石 麻保 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国 / 中小企業 / 情報の非対称性 / 民営化 / 郷鎮企業 |
Research Abstract |
平成15年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において、申請者は以下のような研究を行い、成果を得た。 今年度は、貸し手(銀行)-企業間での下級地方政府の金融仲介機能のあり方とその効果,人材・技術導入面での地元企業の下級地方政府への依存度とその理由,下級地方政府と企業の間での人材の循環,企業内における人材の育成等の実態解明を行ったことである。このために、2度の現地調査、及び企業マイクロデータによる初歩的な分析も行なった。 具体的な成果の一つ目は、依然として中国中小企業は深刻な情報の非対称性に直面しており、これを緩和させていくことが企業経営にとって有利であることが明らかとなったことである。中国中小企業の資金アクセス難への対策として、信用担保機構による仲介機能の可能性が指摘されているが、申請者らによる現地調査を通じて、信用担保機構は現段階では十分に中小企業の情報は悪を実現しておらず、中国中小企業の資金アクセス難を緩和するには至っていないことが分かった。即ち、資金アクセス難緩和のための仲介機能は中国中小企業にとって極めて重要な課題である。このことについては、企業利潤増大に対する仲介機能の役割の重要性を考慮した企業の利潤モデルを構築し、検証を行った。本成果の一部を取り出し修正付加をおこなった論文は、別掲白石・矢野(2003)として発表された。 具体的な成果の二つ目は、中国における中小民営企業における資金アクセス難緩和のための方策に関するものである。申請者らの調査を通じて、従来企業情報を把握し、金融仲介機能を果たしていた下級地方政府のその効果は次第に小さくなり、これに替わって、企業内部の従業員、及び長期に取引関係にある相手企業による当該企業の情報把握及びその交換が有効であることが見出された。つまり、中小企業自身が、資金アクセス難緩和のための方策として、企業内部での人材育成を重視するとともに取引企業との企業間関係を長期に維持していこうとしていることが、現地調査より明らかとなった。また、このことを重視して、中国中小企業では、従業員雇用の際、学歴よりもむしろ個別企業での経験や当該地域の熟知度を尺度として雇用を決定していることも現地調査において明らかになった。そしてこれらのことは、中国中小企業には、企業特殊事情を考慮した雇用が行われていることが示唆された。以上の成果は報告書としてまとめられ現在投稿準備中である。
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Research Products
(1 results)