2004 Fiscal Year Annual Research Report
経済発展における中国型市場連邦制の有効性の検証-不完備市場への補完的機能-
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03J04500
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白石 麻保 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国 / 中小企業 / 民営化 / 人材育成 / 生産性 |
Research Abstract |
平成16年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において、申請者は以下の2つの課題に取り組み、成果を得た。 具体的には、1.中国の中小民営企業の情報獲得能力・企業間ネットワーク形成及びそのための中心的人材の育成の現状について企業訪問調査に基づき実態解明を行った。これは、中国中小企業が深刻な情報の非対称性に直面しており、これを緩和させていくことが企業経営にとって有利であるという昨年度の成果を踏まえ、その資金アクセス難への対策のひとつとして、情報獲得能力の上昇という観点から企業内での当該職位担当の育成状況について解明しようとしたものである。2.中国型市場経済化の理論的意義と他の途上国への応用可能性を検討することを目的としてその初期条件への注目という観点から、前段階である計画経済期の企業の技術に関する分析を行った。 具体的な成果の一つ目は、中国中小企業の情報の非対称性への直面とそれによる資金獲得困難についてその殆どが中小企業の概念に属する郷鎮企業に焦点を当てて実証的に明らかにした。二つ目は、企業訪問調査によって、企業内における販売担当、対金融機関交渉担当などの部門で中核従業員の育成が経営者によって重視されており、当該部門担当者を中心に、長期的な企業間取引関係の形成が行われ、その関係が、民営化後の中国中小企業においても重要な役割を果たしていることが明らかになった。この二つの成果は、主として課題1に関する成果である。この成果の一部を取り出し修正付加をおこなった論文は、一部修正を加え、Shiraishi and Yano (2004)において発表されているほか、現在投稿準備中である。 三つ目は、主として課題2に関する成果であり、計画経済期における中国製造業企業の生産性レベル、技術進歩の性質を1952年から1980年までの江西省企業マイクロデータを用いて実証的に明らかにした。ここで、従来未整備の1950年代以降の中国企業マイクロデータの整理、実質化、データ特徴分析などの基礎的な作業を行い、その上で計測、推定を進めている。初歩的な計測及び推定の結果、計画経済期においても企業のTFPは一時の政治的混乱で低下することはあるものの、それはすぐに回復し全体としては上昇傾向にあること、そして企業が保有する技術進歩の性質は、労働使用的であったことが示されている。この新知見を踏まえ、市場経済化の初期条件の解明という点から更に詳細なモデルの設定、複数の推定法による丁寧な推定が必要である。また、この成果は学会・研究会での報告を経て現在投稿準備中である。
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Research Products
(1 results)