2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J04516
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武藤 幸雄 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水道事業 / 目標利潤(target profit) / 限界価格逓増型 / 限界価格低減型 / Ramsey number |
Research Abstract |
本年度は、第一に、最適な水料金体系を導出するためのモデルを構築して分析し、分析成果を、"Nonlinear Water Tariff Designs and Target Profits for Water Utilities"というタイトルの論文にまとめた。この論文は、京都大学・岡田章教授の主宰する「ゲーム理論セミナー」で口頭発表し(平成16年1月29日、京都大学経済研究所)、セミナー参加者のコメントを参考にして修正を加え英文校閲を行ってから、平成16年3月上旬に米国の経済学雑誌へ投稿し、現在は第一次審査中である。 上記論文では、水道事業体の利潤をある目標水準(以下では、目標利潤(target profit)と呼ぶ)に一致させながら、社会的余剰を最大化する料金体系を、水道事業の最適料金体系として定義し、目標利潤の変動がこの最適料金体系の形態にどのような影響を及ぼすかを、数学的に分析した。モデルでは、料金規制者が個々の消費者の水需要特性を把握できず、両者の間に情報の非対称性が存在するものと想定し、メカニズム・デザインの理論を用いて、最適化問題を定式化した。 一般に、最適料金体系は、Ramsey numberと呼ばれる指標が負になるとき限界価格逓増型になり、正になるとき限界価格逓減型になるが、上記論文では、まず、このRamsey numberが、水道事業の目標利潤について単調増加になるための十分条件を導出した。そして、水道事業における目標利潤が、ファースト・ベストの状態で水道事業体が得る利潤の大きさを超えるようになると、最適料金体系が一般に限界価格逓増型から限界価格逓減型に切り替わることを、上の十分条件を用いて数学的に証明した。また、これらの分析結果を確かめるための数値シミュレーションも上記論文では行われた。 本年度は、第二に、水道事業の業務を全国で初めて民間へ全面委託した福島県三春町企業局を対象にして、業務委託契約の内容と、業務委託が給水原価と料金の水準に及ぼす影響などについて、聞き取り調査を行った(平成16年2月下旬)。
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