2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J04516
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武藤 幸雄 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非線形料金制 / 規模の外部不経済性 / 逓増型料金制 / 公営水道事業 |
Research Abstract |
本年度は,まず2004年6月に,2004年度春季日本経済学会(明治学院大学で開催)で前年度の研究内容を発表したが,同6月には,前年度に米国の経済学雑誌に投稿した論文について不採用の通知があった.このため,前年度に採った分析課題と分析アプローチについて見直しを行うことにした.この見直しの結果,公営水道企業が料金収入を総費用に一致させる制約に直面しながら消費者厚生の最大化を目指す状況を想定して,そのときの最適水料金体系の性質を分析することを,新たな分析課題に設定することにした. 分析の際,公営水道企業の総費用を,需要家費(水道システムに接続する消費者数に連動して変わる費用)と,生産費(水供給量に連動して変わる費用)とに分けた.また,消費者の水需要と所得の限界効用が独立であるか,負の相関を持つことを仮定した.分析によつて以下の三点が明らかになった.第一に,需要家費が十分に高くて水道供給契約を結ばない消費者が存在し,最適供給で平均生産費が逓増傾向を示す場合,一般に,最適料金体系の限界価格は消費者の水購入量が増えるにつれて上昇し,限界生産費に収束するか,限界生産費よりも高い水準へと上昇する.第二に,上のように最適料金体系が価格逓増型になる場合,最適供給において平均生産費が急速に逓増するときほど,最適料金体系の累進度は高くなる.第三に,水需要と所得の限界効用の間の相関係散が低下する場合,最適料金体系の限界価格は,購入水準が小さいときに低下する一方で,購入水準が大きいときには上昇する. これらの分析結果は、2004年11月に,2004年度秋季TEA会(Theoretical economics and agriculture,京都大学で開催)で発表し,2004年12月に米国の経済学雑誌に投稿した(現在は審査中). 2005年1月以降は,水需要に不確実性があるときの最適水料金体系の性質についての分析を進めている.
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