2004 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム思想における聖典クルアーン(コーラン)の意味-「書かれたもの」として-
Project/Area Number |
03J04530
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒宮 玲子 (大川 玲子) 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | イスラーム / イスラム / クルアーン / コーラン / 聖典 / 教典 / 書物 |
Research Abstract |
イスラーム思想を「書かれたもの」(=書物)という概念で再構築し、その聖典クルアーン(コーラン)の思想的位置づけを行うことを目指した。昨今の研究においてはクルアーンの口承性が見直されつつあるが、本研究は書承性というもう一つの重要な側面の再評価を試みた。 クルアーンが天にその原型を持ち、かつ、旧約・新約聖書を先行聖典としていることに注目し、クルアーンを基点に天の原型との垂直関係と、先行聖典との時系列的水平関係という枠組みを設定する。このなかでクルアーンという書物の位置づけを行い、イスラーム教徒にとっていかなる聖典として認識されているのかを、思想的に解明した。 具体的には、クルアーン写本という「書物」、つまり書承の成果物に注目し、研究を行った。まず、昨年より本格的に収集した関連資料の精読を継続した。同時に、クルアーン写本を所蔵する海外の美術館・博物館と連携を密にし、調査を始めた。アイルランドのチェスター・ビーティー美術館、バーレーンの「クルアーンの館」、インドネシアの「クルアーンの館」、エジプト・カイロ国立博物館やアメリカのメトロポリタン美術館、ナセル・D・ハリーリー・イスラーム美術コレクションなどである。各館の所蔵状況を確認するとともに、実際に図版写真資料の送付を依頼し、精査した。 これらの成果の中間報告的な発表として、『図説コーランの世界 写本の歴史と美のすべて』(河出書房新社)を刊行した。7世紀のアラビア半島で、預言者ムハンマドが受けた「口承」の啓示メッセージから始まり、中世から近代に至る「書承」の結晶であるクルアーン写本群の歴史的・文化的背景を分析・解説し、さらには近現代における、クルアーンの印刷、さらにデジタル化の潮流についても言及した。つまり、クルアーンという聖典の「書かれたもの」としての歴史的な流れを概説的に描写することができたのである。
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Research Products
(2 results)