2004 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム復興のネットワーキング:トルコを事例とする実証的研究
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03J04531
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤江 史子 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | イスラーム復興 / ネットワーク / ワクフ |
Research Abstract |
本年度は、「社会資本」や「ネットワーク」という本研究におけるキー概念について先行研究のレビューを行うと同時に、12月から1月にかけて現地調査を行った。現地調査では、スノーボーリング式サンプリングにより得られたサンプル21人について、各自の経歴や社会活動への参加の契機や動機、自身の人生における機能(結婚、就職、昇進など)に関するインタビューを実施した。今回は特に、現代の復興勢力の台頭と密接に関係していると言われ、復興勢力にネットワークの結節点の一つを提供しているワクフ(財団)活動に焦点を当てた。その結果、ワクフには共同運営者が特定の宗教教団と関係(特定の宗教的権威への紐帯)を有しているか、より水平的な信頼/利害共有関係に基づいているのかにより、資金収集や事業の規模や成功の度合いに違いが見られるとの暫定的結果が得られた。また、ワクフを通じたサービスの提供者と受給者の関係(恒常的維持・発展/一時的・散逸構造的)、人生の便宜供与ネットワークとしての意識の有無、運営者の職業的背景がかなりワクフの発展や成功/不成功と関連していることが分かった。さらに、本研究の趣旨からは少しそれるが、現代のワクフには単なる慈善事業ではなく、かなり企業的運営形態をとるものもあることが分かった。このように、ワクフといってもその実態は様々であり、サンプルを増やして現代のワクフの類型を描き題す必要も明らかとなった。ワクフ活動がイスラーム社会特有の「社会資本」として機能していることは明らかであるが、個々人がもつ複数のネットワークにおけるワクフの位置づけがいかなるものであるのか、そして、その位置づけが現代のイスラーム復興の特質にいかに関係しているのかという点については、これまでの調査で見通しを立てるには到らなかった。
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Research Products
(1 results)