2005 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカ・大湖地方におけるバナナの流通ネットワーク形成と地域の内発的発展
Project/Area Number |
03J04532
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸尾 聡 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 流通ネットワーク / 内発的発展 / 商品経済化 / 翻訳的適応 / 在地仲買人 / バナナ / 東アフリカ |
Research Abstract |
本研究では、タンザニア北西部の農村地域に居住する農耕民を事例として、単一の換金作物に依存してきた脆弱な経済構造のなかで地域社会が示す対応の様相を一作物であるバナナに焦点をあてて分析した。 報告者は、対象地域におけるバナナの文化的経済的な重要性を歴史的な文脈を通して位置づけたうえで("Multiply Useful Plants : Uses and Usefulness"における論文で公表)、生産農民に対する調査から、従来自給用が中心であったバナナ生産が販売目的に部分的に転換してきた過程を明らかにした。また、社会的経済的な変容のなかで農村内では現金稼得源の創出と相互扶助を兼ねた農民組織が活動を盛んにしており、その詳細についても検証を進めている(論文執筆中)。一方、バナナの流通ネットワークに関する分析から、この流通システムには他の民族集団の関与が少なく、バナナ仲買人の多くが同郷の生産農民でもあるという特徴が見いだされた。仲買人は対象地域と外部の近隣都市を結び情報や物資の媒介役を担いながらも、生産農村では経済的な合理性と社会的な規範とのはざまで商いに従事しており、商品経済化が浸透している今日、前者を優先する立場もとくに若い仲買人には多くみられた。しかしながら、多数の仲買人を通じて形成される流通ネットワークは、生産地域の生態的社会的環境に深く根ざした人びとの関係性が大きく影響している。対象地域におけるバナナの流通ネットワークは、制度や組織を有せずに内発的に形成されてきたものである。近年町の居住者のなかから新たに萌芽しつつある流通の企業化を目指す動きは、町と農村を含む地域全体がもつ発展へのポテンシャルを示すものであり、社会経済的な変動に対する地域社会の適応の一端である。
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Research Products
(1 results)