2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J04545
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
守川 知子 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 巡礼(参詣) / シーア派 / イラン / イラク / 聖地 |
Research Abstract |
本年度は当該研究課題の最終年度であり、これまでに行った資料調査を基に数々の発表を行った。シーア派イスラームにおける聖地巡礼の実態や、イランにおけるシーア派信仰の有り様については、イラン研究会(京都・4月)、日本中東学会(大阪・5月)、イスラーム・写本文書資料の総合的研究会(東京・7月)、スーフィズム・聖者信仰・タリーカ研究会(東京・1月)において口頭発表を行った。また、その成果の一部を『東方学報(京都)』に投稿した(「聖地アタバート参詣考」と題して掲載予定)。中でも、シーア派ムスリムの聖地巡礼には、生きている人々だけでなく、死者もまた安息の地を求めて聖地に巡礼し埋葬されるという事実があることを導き出した点は重要であろう。引き続き次年度には、史学研究会例会(京都・4月)、洛北史学(京都・6月)、Sixth Biennial Conference on Iranian Studies(London・8月)など国内外にて発表を精力的に行うと同時に、シーア派聖地研究の中でも巡礼(参詣)という信仰形態の表出について纏めた、学位請求論文『シーア派聖地参詣の研究』の出版を予定している。これらの活動を通じて、シーア派聖地が如何なるものであり、シーア派ムスリムは聖地をどのように認識しているのか、という点を明らかにしようと努めた本研究の集大成としたい。 もっとも、三年間の研究を通じて、19世紀のイラン社会における聖地参詣の様相は明らかとなったが、ナジャフやカルバラーといったイラン国外への参詣の実態に重点を置いたため、イラン国内の聖地参詣や、聖地そのものの果たす役割といった問題について触れることはできなかった。これらの点は、現代のイランやイラク情勢と合わせ、今後検討していくべき課題としたい。
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