2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J04549
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河田 学 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 虚構 / フィクション / 虚構性 / 言語哲学 / 美術哲学 / 記号論 |
Research Abstract |
研究二年度日にあたる本年度の研究では、まず第一に、昨年度に引き続き、映像(写真、映画等)における虚構性の研究を行った。Waltonが主張する「写真は透明な表象である」というテーゼが、写真の特質を規定するには不適切であることは昨年度の研究においても指摘したが、本年度はここからさらに、Walton同様、写真を「リアルな」realisticな表象としてとらえてきたさまざまな論者(おもに、Sontag、Bazin、Barthes)の主張の比較検討、および彼らの議論が原題の現実の写真作品等の分析になじむかという、理論の適用性の実証的検討を行い、このような「リアリズム的写真観」とでもいうべき写真観は、メディアとしての写真が内在的にもつ特質を記述したものであるというよりは、むしろ、われわれ写真を見る側の人間が、写真をリアリズム的な表象であると規定しているという、われわれ自身の写真に対するスタンスのことであると結論した。 さらに本年度の研究においては、写真について行った議論をもとに、写真技術を基盤とした今ひとつの表象形式である映画についても、虚構的な映画作品においては登場人物がカメラをみることを禁止されている(いわゆる「カメラ目線」の禁止)という現象を切り口として、これを文学的虚構作品にかんしてGenetteが「メタレプシス」metalepseと呼んだ現象と比較検討しすることにより、虚構性を中心とした分析を行った。その結果として、映画におけるカメラは視覚的な意味での「視点」ではけっしてなく、言語による虚構物語における視点と同様、虚構的情報を伝達するための一つの窓口としてとらえることを提唱した。これは、言語によるフィクションと映像によるフィクションを統一的に理解するための一つの理論的基盤となるものである。以上の研究成果については、すでに論文は完成しているが、現在その投稿先を模索中である。
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