2004 Fiscal Year Annual Research Report
ポリエチレンオキシド-水系ソフトマターの静的・動的構造と相転移機構の解明
Project/Area Number |
03J04643
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千葉 文野 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | PEO / ミクロ相分離 / 水素結合 / カルコゲン |
Research Abstract |
近年の実験技術や理論・シミュレーション技術の発展に伴い、ソフトマターや複雑液体と言われる単純でない系が、普遍的な視点から物性物理学として研究可能となってきた。こうした系の基礎的研究は、ナノテクノロジーやバイオなどの最先端技術に直接に応用できる可能性があり、現在特に必要とされている。本研究では、ポリマーのブロック共重合体のミクロ相分離を題材とし、基礎的研究のみならず新しい素材の開発をも目標とするため、電池、あるいは生体親和性、といった応用面から注目を集めているポリエチレンオキシド(PEO)を含む系を扱った。 まず、ポリエチレンオキシド(PEO)-b-ポリ(2-ビニルピリジン)(P2VP)ブロック共重合体の溶融物のナノスケールにおける構造を小角・超小角X線散乱、透過型電子顕微鏡等を用いて調べた結果、低温で相溶し高温でミクロ相分離を示し、いわゆるLCST型の振る舞いをすることがわかった。これは、PEOの酸素原子の不対電子対が関係する水素結合が低温でPEO-P2VP間に働いているが高温で解消されるために相分離すると考えられる。そこでラマン・IR測定を行い、水素結合を直接測定することを試みた。 次に、より複雑なソフトマターとして近年ナノスケールの入れ子構造など新規構造を発見している台湾の精華大学のHsin-Lung Chen教授らとの共同研究で、ω-Methoxy Poly(ethyleneoxide) Phosphateの構造を2次元小角X線散乱・超小角X線散乱測定によって研究し、入れ子構造の配向性を初めて明らかにした。 酸素と同族のセレンで構成される鎖状高分子構造の溶融状態における静的性動的構造を研究し、PEOにおけるO原子と同じようにSeの不対電子対に起因する引力的相互作用が系の構造/構造間相転移に本質的役割を果たすことを解明した。
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Research Products
(4 results)