2003 Fiscal Year Annual Research Report
高自由度近可積分ハミルトン力学系の大域的相空間構造
Project/Area Number |
03J04661
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 振一郎 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ハミルトン力学系 / カオス / 統計力学 / 摂動法 |
Research Abstract |
研究課題:「高自由度近可積分ハミルトン力学系の大域的相空間構造」の研究を日本学術振興会の特別研究員(ポストドクター)制度と科学研究費補助金制度の協力を得て行なった. (1)摂動法としての「くりこみ法」の研究 カオスの生成機構や基本的性質を調べるため,対象として応用も多い古典ハミルトン系(以後,単にハミルトン系と省略),特に可積分系に摂動が加わっているという意味で最も基本的な力学系である近可積分ハミルトン系,特にその目的を達成するための数理的手法として『摂動法としての「くりこみ法」の研究』を行なった. また,(1)とは別に,(2)大自由度長距離相互作用ハミルトン系における力学(正準方程式)の数値計算とカノニカル統計理論から導かれるマクロ変数の期待値の相違 について研究した.統計力学はミクロな法則から緩和後のマクロ変数の期待値を予言する理論体系で物性論のみならず,経済物理学等でもその威力を発揮する.しかし孤立系に対し,カノニカル統計理論の予言とミクロカノニカル統計理論,力学の予言に相違が生じ得る大自由度の長距離相互作用ハミルトン力学系に対しての研究は未だ研究途上である.また,統計力学はエルゴード仮説のもとに構築されているので,力学系の視点で見た大自由度ハミルトン系の相空間構造とも関連が深い.そこで,『大自由度長距離相互作用ハミルトン系における力学(正準方程式)の数値計算とカノニカル統計理論から導かれるマクロ変数の期待値の相違』に関する研究を行なった. (1)の課題に対して,具体的にはハミルトン方程式と数学的構造が等しい差分方程式(:シンブレクティックマップ)に対して,ハミルトン系の特徴を保存した摂動法の系統的枠組を構成し,査読付き論文に投稿,受理された.また,この成果を科研費による旅費の援助を受け,各地で行なわれた研究会等で発表した. (2)の課題に関しては,科研費により購入した高速計算機により正準方程式を数値計算を行なう事,及びカノニカル統計力学の解析的な予言,の双方でマクロ変数の平衡期待値を比較した.それにより系の相転移点エネルギー近傍では大自由度極限での統計力学期待値への漸近が遅いことを発見した.この成果を科研費による旅費の支援を受け,物理学会等で発表した.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Maruo, S.Goto, K.Nozaki: "Renormalization Analysis of Resonance Structure in 2-D Symplectic Map"Progress of Theoretical Physics. (In Press).
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[Publications] S.Goto, K.Nozaki: "Liouville operator approach to symplecticity-preserving renormalization group method"Physica D. (In Press).