2004 Fiscal Year Annual Research Report
高自由度近可積分ハミルトン力学系の大域的相空間構造
Project/Area Number |
03J04661
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 振一郎 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ハミルトン力学系 / 相空間構造 |
Research Abstract |
相互作用距離が1パラメータでコントロールされる大自由度古典ハミルトン力学系族を調べた.この力学系族はαXYモデルと呼ばれ,1998年頃に導入された.このモデルは古典力学系における長距離力の役割について調べるために用いられている.長距離力領域において,この力学系族は,自由エネルギーは熱力学極限で相互作用距離に依らないが,アプノフ数の自由度依存性は相互作用距離に依存することが知られている.この事は統計力学的性質と力学系としての性質が異なることを端的に表している.今回我々はマクロ変数である温度とオーダーパラメーターの自由度依存性に注目し,ハミルトン力学による時間平均値と,熱力学極限でのカノニカル平均値との相違を観察することにより有限サイズ効果の相互作用距離依存性を調べた. 長距離力系の場合自由度無限大であっても,一般に系に相加性が無いため,力学系で定義されたマクロ変数の平衡期待値とカノニカル平衡期待値とが一致する保証は無い事が知られている.このαXYモデルの場合においては,充分に自由度数が大きい場合,力学系で定義されたマクロ変数の期待値とカノニカル期待値とが一致することが先行研究により示されている.しかし,有限サイズ効果までもが力学の場合とカノニカル統計の場合で一致するかどうかについては議論は無く,その検証は我々の研究を待つ事になる.また,自由度数が少いαXYモデルでの緩和過程等を議論する際に非常に基礎的な知識となる.我々はこの有限サイズ効果を,高エネルギー領域でカノニカル分配関数を用いて理論的に予言し,それが力学系の時間発展を数値的に積分から得られる有限サイズ効果と矛盾しない事を確認することができた.また低エネルギー領域では力学系の時間発展の数値的積分を行ない,その有限サイズ効果のα依存性を調べる事ができた.
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Research Products
(1 results)