2005 Fiscal Year Annual Research Report
代数的手法による弦理論の非摂動的定式化とDブレインの双対性
Project/Area Number |
03J04688
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶浦 宏成 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 弦理論 / 場の理論 / 弦の場の理論 / Dブレイン / 双対性 / 位相的弦理論 / ホモトピー代数 / 非可換トーラス |
Research Abstract |
ゲージ理論と重力理論を統一的に扱うことを可能とする弦理論において,ゲージ場は開弦,重力場は閉弦の状態に含まれる。このことから一般に,開弦と閉弦の混在した系に関する理解は,弦理論においてもっとも重要なテーマのひとつとなっている。特に,その開弦と閉弦の混在した系のtreeの部分はホモトピー代数の構造を持つ。昨年度は,そのような構造を定式化し,open-closedホモトピー代数(OCHA)というものを定義し,それの持つ一般的な代数構造について議論した(Communications in Mathematical physicsに掲載予定)。 今年度は,そのOCHAの物理的背景,及び物理又は幾何学的な応用について議論した(Journal of Mathematical Physics 47 023506 (2006))。特に,このOCHA構造はZwiebach'95による開-閉弦の場の理論をtreeの部分に制限した時に得られる構造であり,また,Kontsevich'97によって肯定的に解決された変形量子化問題における設定をその一例として含むことを議論した。さらに,様々な位相的弦理論においては,treeの開弦の成す構造としてDブレインとその間の開弦からなる圏を考える場合が多い。OCHAはそのような設定では開弦の理論を記述する圏の,閉弦の凝縮による変形を記述し,特に,B-模型と呼ばれる位相的弦理論のtreeの開弦と閉弦の混在した系を考えると,複素多様体上の正則ベクトル束の成す圏の,複素構造の変形に付随する変形が記述されることについて議論した。 一方,その具体例に対応するものとして,昨年度の2次元トーラスの場合の拡張として,高次元トーラス上の正則ベクトル束の成す圏の非可換変形を構成した(投稿中)。一方,その圏の射の合成則として,テータ関数の和公式の非可換変形を構成した(Letters in Mathematical Physics 75 279--292 (2006))。
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