2004 Fiscal Year Annual Research Report
特異な電子状態を持つケイ素-ホウ素結合化合物の創製と物性
Project/Area Number |
03J04738
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石田 真太郎 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ケイ素 / ラジカル / カチオン / 軌道間相互作用 / 機能性分子 / 結晶構造解析 / 理論計算 |
Research Abstract |
本年度の研究実績の概要を以下に示す。 1)新規な環状共役シリルカチオンである2-シライミダゾリウムカチオンの発生 この化合物は代表的なカチオン性芳香族ヘテロ環化合物の一つであるイミダゾリウムの2位をケイ素に置き換えた化合物であり、その性質は含ケイ素芳香族の観点から非常に興味深いがこれまで報告例はなかった。そこで窒素およびケイ素上に嵩高いアルキル基を導入したクロロシランを2-シライミダゾリウムカチオンの前駆体として設計し、その塩素アニオン引き抜き反応で2-シライミダゾリウムカチオンの発生を検討した。塩素アニオン引き抜き剤としてトリエチルシリルカチオンを選択したところ、低温においてカチオン種の発生に成功した。発生したカチオン種は各種NMRスペクトルおよび理論計算から2-シライミダゾリウムカチオンであり、このものがイミダゾリウムに比べて弱いながらもある程度の芳香族性を持っていることを明らかにした。 2)1,3-ジアザ-2-シラ-4シクロペンテン(DASCP)ラジカルカチオン塩の単離と構造 1)の研究の途上、前駆体であるクロロシランに銀塩を作用させると塩素アニオン引き抜きではなく、一電子酸化反応が進行した。その結果、対応するカチオンラジカル塩を安定な化合物として得ることに成功した。これはDASCPラジカルカチオン塩の初めての単離例である。中性およびカチオンラジカル状態の結晶構造解析から、DASCPではケイ素と環外元素のσ*軌道とπ軌道間の相互作用が強く発現し、分子の構造およびラジカルカチオン状態の安定化に寄与している事が解った。また、この反応はDASCPに一般的であり、ケイ素および窒素上の置換基を変えたDASCPラジカルカチオン塩も単離できた。DASCPは一般に低い酸化電位を持つことから、ホール輸送材料などの機能性分子としての利用が期待できる。
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Research Products
(2 results)