Research Abstract |
雌雄交尾器に見られる錠と鍵的対応の進化過程を解明するため,甲虫目オサムシ科の各種を用いて,以下の研究を行った. 1)交尾器形態と交尾行動の相関した進化 オオオサムシ亜属に特徴的な交尾片は,精子競争における精包の掻き出しに機能している可能性がある.この仮説から予測される交尾片サイズと精包サイズの相関した進化を,22分類群の種間比較解析により検討した.系統的な制約をコントロールするため,核遺伝子5遺伝子座を元にした最尤系統樹を用いて,独立な対比に基づく解析を行った.結果,1)交尾片と精包のサイズは体サイズと比較してそれぞれ3倍および等倍率で進化している;2)交尾片と精包のサイズは正に相関する;3)交尾片と交尾時間は負に相関する,ことが明らかとなった.これは,精子競争における2つの戦略:1)ライバルの精子を排除する;2)交尾した雌を守る(長時間交尾)が,オオオサムシ亜属内で進化し,その間には拮抗的な関係があることを示唆する.(論文執筆中) 2)交雑帯における交尾器への選択 ルイスオサムシとクロオサムシの交雑帯を横断的に調査し,外部形態,交尾器形態,ミトコンドリア遺伝子頻度に影響する自然選択の程度を,tension zone modelにより解析した,結果,外部形態やミトコンドリア遺伝子に比べて,交尾器形態にはより強い選択圧がかかっていることが明らかとなった.また,交尾器とそれ以外の間ではクラインの位置にズレがあり,これが交尾器形態にかかる方向的な選択によって引き起された可能性を示唆した.(印刷中) 3)交尾器形態の多様化 オーストラリアオサムシ属の交尾器はこれまで研究されてこなかったが,非常に特殊で多様な交尾器形態を持つことが明らかになってきた.この多様性の進化プロセスを明らかにするため,外部形態形質に加え,核とミトコンドリアの3遺伝子座を用いて系統解析を行った.結果,オーストラリアオサムシ属内では,比較的シンプルな交尾器から複雑な交尾器への方向的な進化が見られ,またそれは体サイズおよび食性の進化と関連しているようだった.(印刷中)
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