2004 Fiscal Year Annual Research Report
錐体視物質の分子特性に依存した網膜神経回路形成の分子機構の解明
Project/Area Number |
03J04760
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大西 暁士 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 色覚 / 神経回路形成 / 3色性 / 錐体視細胞 / 視物質 / ノックインマウス |
Research Abstract |
マウスは本来、常染色体上にUV(λmax=360nm)・X染色体上に緑(λmax=510nm)錐体視物質遺伝子を持つ2色性である。この緑視物質遺伝子座に波長シフトを誘発する変異(S308A)を導入することで3色性を作成し、以下の結果を得た。 (1)遺伝子特異的Flat mount in situ hybridizationにより、野生型(内在性)・変異型視物質を発現する視細胞の網膜上の空間分布を可視化した結果、それぞれの視細胞は直径30um程度の相互排他的なクラスター(特定の錐体の集合)を形成していた。これはX染色体の不活化後に緑錐体が増殖した事を示している。 (2)OFF型双極細胞の細胞数・空間分布に変化は見られない。2次ニューロンである双極細胞において、6種類の双極細胞マーカー(Chx10,Vsx1,Goα,PKC,Recoverin,NK3R)の陽性細胞数・空間分布を比較し、有意な差は見られなかった。 (3)波長弁別の行動実験において、ノックインマウスに提示する光強度・波長の条件設定を行った。 また、UV錐体および緑錐体の分布を調べ、以下の結果を得た。 (4)哺乳類網膜ではUV(短波長)錐体は腹側に、緑(長波長)錐体は背側に発現し、中間部分では両方の共発現錐体が存在する。Flat mount in situ hybridizationの結果、背側でもUV視物質の発現が確認された。 (4)の結果から、3色性マウスの背側網膜では、UV・野性型緑・変異型緑視物質が発現している。これは3色性霊長類の周辺網膜の分布と等価である。また、霊長類周辺網膜での反対色形成には特定の錐体の集合が必要と考えられており(Matrin et al., Nature 410, 933-936, 2001)、(1)の結果はこの分布を再現している。本マウスは3色性霊長類の色覚形成モデルとして、特に分子生物学的解析への発展が期待される。
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Research Products
(1 results)